【東京・ネクスウィル】買い手がつかない多様化する「訳あり不動産」の解決に挑む

インタビューに応じる、株式会社ネクスウィルの丸岡 智幸社長

空き家や共有持分、再建築不可物件、借地(底地)など一般的な不動産と比べて売却が難しいとされる訳あり不動産。東京港区に本社を置く株式会社ネクスウィル(丸岡 智幸社長)はその訳あり不動産の買い取り再販をしています。現在、訳あり不動産買い取り事業「ワケガイ」、空き家や訳あり不動産のCtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を展開中です。

ネクスウィルを率いる丸岡 智幸社長は、2019年にネクスウィルを設立。 顧問弁護士からの相談を契機に訳あり不動産の買い取り事業をスタート、社会問題の解決を目指しています。

2024年5月には訳あり不動産を解説した書籍『拝啓 売りたいのに家が売れません』(自由国民社発行)を出版、さまざまな訳あり不動産の事例を漫画を交えた紹介で、「とても分かりやすい」と好評です。今回は、ネクスウィルの丸岡 智幸代表取締役に訳あり不動産の解説や同社が展開されている事業について話をうかがいました。

株式会社ネクスウィル

代表取締役 丸岡 智幸 氏

目次

相続による訳あり不動産が今後、増加

相続により、今後とも訳あり不動産が増加すると分析する丸岡社長

――株式会社ネクスウィルさまの概要からお願いします。

丸岡 智幸氏

私は非活用不動産の最たるものである「休眠不動産」の流通を目指しています。特に、共有権利者の存在により、活用が難しい物件や再建築不可などの法定制限がある物件、人口減や高齢化により、所有者が不在となった全国の空き地を独自のノウハウとIT技術により、再活用可能にし、次の所有者へとバトンをつなぐ不動産流通の向上を使命としています。

設立は2019年1月で現在の従業員数は40名(2025年4月1日現在)。東京港区に本社を構え、支店の拠点では、大阪、名古屋のほか、2025年1月に福岡支店をオープンし、業務としては訳あり不動産の買い取り事業などを展開しています。

――そういう中で「訳あり不動産」にフォーカスしているようですが。

丸岡社長

今、訳あり不動産が増加しています。訳あり不動産とは一般的には事故物件、シロアリに食われているというような瑕疵物件と思われがちですが、実際には、長年放置され続けて老朽化した空き家、再建築不可物件、一つの不動産を複数人が所有する共有名義の不動産など様々な訳あり不動産があります。たとえばご両親が所有されていた不動産をごきょうだいそれぞれ相続された結果、共有不動産になったケースもあります。あるいはお一人で相続されてもそこには住まず放置して、結果的には空き家になったケースも訳あり不動産です。

相続や離婚により共有名義の不動産が発生する

このような訳あり不動産は全国各地に点在している

――私もそうですが、どこか訳あり不動産については他人事と考える方も少なくありません。

丸岡社長

日本では2024年には、約161万人もの方が亡くなられ、過去最多を更新しました。人が亡くなられると相続が発生いたします。相続により、訳あり不動産を生み出し、または発覚するキッカケにもなっています。あるいはご結婚され、お子さんが生まれると中には都心部にマイホームをご購入されますが、マンション価格が高騰しているため、ペアローンで賄うケースが増えています。しかし、離婚は一定数発生し、その際、不動産を処分しようとしても身動きが取れなくなるケースもあるのです。

このような訳あり不動産にはご自身には一見関係ないと思われるかもしれませんが、いつの間にか巻き込まれ、現在、置かれている状況に驚かれるケースはこれからますます増えていくものと思われます。そこで私も社会問題化している訳あり不動産を少しでも解決したいと考えたのです。

――訳あり不動産の解決のためにさまざま事業を展開されていますね。

丸岡社長

そこで、共有持分などの訳あり不動産を買い取り、売れない”訳”を排除し再販する「ワケガイ」を2020年10月より開始。続いて全国の訳あり不動産や、空き家について、「売りたい人」と「買いたい人」をオンライン上でマッチングさせるCtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を2022年2月から立ち上げました。

不動産業界には戸建て住宅やマンションの買い取りの専門業者は数多く存在しますが、訳あり不動産に特化した買い取りやマッチングを行う不動産業者はほとんどございません。私たちは訳あり不動産のリーディングカンパニーとして、解決に向け努めているところです。

全国で豊富な買い取り実績を持つ「ワケガイ」

訳あり不動産買い取り事業「ワケガイ」

――それでは「ワケガイ」について解説をお願いします。

丸岡社長

管理や所有に困っている空き家や、再建築不可、共有で所有している不動産などを当社で買い取り、法的知識や専門知識を以って、再度市場に流通させています。

例えば、相続によりごきょうだい同士や疎遠になった親族同士で共有状態にある不動産は、使用や処分方法などの意見が一致しないケースがあります。もし、このまま共有不動産状態を続けますと、将来的に更なる問題に発展する可能性があります。
 
 この共有持分をはじめとする訳あり物件の買い取りに特化し、全国都道府県のさまざまな物件に対応する豊富な買い取り実績を持っています。ワケガイでは、全国を対象に、共有持分や共有名義の物件、再建築不可の土地、空き家やゴミ屋敷、さらには事故物件など、通常の市場では売却が困難な物件も、最短1日で最大3億円の一括支払いでスムーズに買い取らせていただきます。

「空き家のURI・KAI」では売りたい人と買いたい人をマッチング

全国の訳あり不動産、空き家問題を解決するマッチングサービス

――この「空き家のURI・KAI」についても教えてください。

丸岡社長

地方自治体が、地域内の空き家の流通・活用促進を目的として、土地家屋の所有者から集めた情報をWebで公開し、購入・居住希望者に提供する「空き家バンク」と近いイメージです。

ただ、「空き家バンク」は、地方自治体によって異なりますが、居住を目的としなければならない、建築基準法に違反していない、再建築不可物件ではない、不動産会社に売買・賃貸契約を個別で依頼していないなどの登録要件があります。

「空き家のURI・KAI」は当社が仲介で入っていないため、上記にあげたような登録要件がない点が大きな特徴です。他の違いは、実勢価格に近い金額で掲載していますので、契約の成約率が高まります。さらには購入者のお問い合わせの代行もしていますのでメリットも大きいです。

無駄な仲介を省き、売りたい人が「空き家のURI・KAI」のポータルサイトに物件を掲載して、買いたい人がそれを見て直接、売り手にトークルームで問い合せをして、マッチングするプラットフォームを提供中です。

相続登記の義務化で新たな局面も迎える

相続登記の申請義務化での対応フローチャート/出典:法務省

――相続登記の義務化で訳あり不動産も新たな局面を迎えていますが。

丸岡社長

空き家の深刻さはさらに増しており、総務省の公表データによると、2023年の空き家戸数は900万戸、空き家率は13.8%と過去最高を更新し続けています。放置された空き家は、倒壊のおそれ、ねずみや害虫がはびこり、悪臭もただよい、不審な人物による不法侵入、景観の悪化などをもたらします。 

そして、近年問題視されているのが、所有者不明土地の増加です。所有者不明土地とは、相続等の際に土地の所有者についての登記が行われないなどの理由により、不動産登記簿を確認しても所有者が分からない土地、または所有者は分かっていてもその所在が不明で所有者に連絡がつかない土地のことです。 

現在では、この所有者不明土地の面積は日本の国土の約2割にも及んでいます。所有者不明の状態が続くと、土地の適切な管理が行われず、放置されることにより、周辺環境や治安の悪化を招き、近隣住民に不安を与える可能性があります。また、土砂崩れなどの防災対策が必要な場所でも、所有者が判明しないために工事を進められず、危険な状態が解消されないことがあります。さらに、公共事業や市街地開発のための用地買収が進まず、土地の有効活用が阻害されるケースも生じます。

丸岡社長

これらの課題を解決するために、2024年4月1日より不動産登記法が改正され、相続登記が義務化になりました。今後相続する不動産は勿論ですが、過去に相続した不動産も登記が必須となるため、親族と不動産を相続していた事実をこのタイミングで初めて知る所有者も増え、訳あり不動産はより増加すると予測されます。

当社は、共有持分やその他の訳あり不動産となる要因を根本からの解決を目指し、日本の空き家問題の解決に貢献します。なお、当社は2024年度(4月~3月)では、反響数は6,000件、買い取り件数が500件、売上高は30億円を予定しています。

得意分野は共有持分の買い取りや空き家

持分のみの売却は単独でも可能

――訳あり不動産もいろいろとありますがどちらを得意分野とされていますか。

丸岡社長

当社が得意としているのは、訳あり不動産の中でも空き家や共有持分の買い取りです。空き家に関してはさまざまなものを買い取りしています。たとえば、ゴミ屋敷で荒れ果てていて、残置物が多くとも買い取っています。

空き家はご実家を出られて別の場所に住まわれている方の中には、遠方なため残置物の整理ができない方もいます。買い取りする場合は、貴重品は引き取っていただき、当社が残置物もあわせて引き取りをさせていただいています。また、シロアリの巣のような空き家、屋根崩れて空が見える状態でも買い取りをさせていただいています。北は北海道から南は沖縄まで、先般は長崎県の五島列島のうちの島にある空き家も買い取らせていただきました。

丸岡社長

次は共有持分。これは1つの不動産を2人以上での所有を指し、多くは相続や離婚がキッカケで生じます。不動産の売却では、共有者全員の同意が必要ですが、持分のみの売却は単独で可能な一方、買い取りをしてくれる不動産会社は非常に少ないのが実情です。過去には3世代にわたり、共有持分の不動産を売却したいが、共有者がわからず、連絡を取ることもできないとの相談がありました。そこで当社では、持分を所有している方を一人一人探し出し、ご相談のうえ当社で共有持分を順次購入し、権利関係を整理して再販しました。

――こうした共有持分の取材をすると昔と比べて、きょうだい間、親族間の関係が希薄になっていることを感じます。

丸岡社長

昔であれば、田舎の本家に集まり、親族の間で親睦を深めていたと思うのですが、今はそうしたことも少なくなっており、親族間のつながりが希薄になっていると感じています。そうした理由から共有持分の問題がなかなか解決されない理由の一つとも想像しています。

地方自治体との連携を積極的に展開

岩手県宮古市との連携協定締結式

――最近では地方自治体との連携を積極的に進められていますね。

丸岡社長

これまで岩手県宮古市、愛媛県八幡浜市、岩手県紫波町(しわちょう)と空き家対策に関する連携協定を締結しています。当社が持つ空き家の訳あり不動産の流通促進の知見を各地方自治体と連携協力することで活かしながら、空き家の有効活用を進め、良好な生活環境の保全や安全で安心して暮らせる社会の実現を目指します。

岩手県紫波町との連携協定締結式
丸岡社長

具体的には、所有者の支援、不動産の買い取り、URI・KAIへの掲載、空き家情報の共有、町民への周知・啓発、地場の不動産会社との協力などで官民連携を展開中です。

愛媛県八幡浜市との連携協定締結式
丸岡社長

この中で、紫波町は土地の開発に注力され、町役場も新たに建設し、周辺の戸建て住宅などもきれいに整備されています。ただし町内は広くすべての戸建て住宅や空き家の改善に手が回らないこともあります。このほか空き家バンクに掲載できない課題も見逃せません。町内には残置物が多い空き家もあり、八幡浜市の事例では再建築不可物件もあり、さらには行政の方も空き家の専門知識が不足している面もあり、そのノウハウについて当社の知見を求めています。

一人でも多くの方に訳あり不動産を知って欲しい

書籍『拝啓 売りたいのに家が売れません』

――書籍『拝啓 売りたいのに家が売れません』に込められたメッセージについて

丸岡社長

実は当社は最初から訳あり不動産に特化した不動産会社ではありませんでした。初期メンバーは私も含めた5人のメンバーで立ち上げましたが、いずれも前職は投資用不動産会社の社員でした。とはいえ、大手も含めて投資用不動産業界は競争が激しく別のビジネスモデルを模索していました。

そんな時、当社の顧問弁護士が訳あり不動産の案件を持ってきまして、「助けて欲しい」との要請を受けました。そして訳あり不動産について色々と調べてみると困っている方は多くいました。しかも大手不動産会社も中々、訳あり不動産には手間も労力もかかるので着手されない実情もあったため、私どもがリーディングカンパニーとして社会課題の解決に向けて努力していくべきだと思いました。

丸岡社長

訳あり不動産で困りの方はどこに相談を寄せるべきか分からない、ご自身も知識があるわけではないとさまざまな点でお困りの方が多いです。しかし、訳あり不動産は解決可能であり、遺言書を残し、資産整理を実施することで未然に防げます。

また、相続登記の義務化により、ご自身が不動産の共有持分か不動産そのものを所有することもあると思います。相続人同士で話し合いがまとまらず、どろどろした関係が続くこともあるでしょう。その共有持分が次の世代に引き継がれると、さらに解決が遠のきます。そこで訳あり不動産やその解決に向け奮闘している企業が存在していることを是非知って欲しいという想いを込めて『拝啓 売りたいのに家が売れません』を出版しました。

企業概要

会社名株式会社ネクスウィル
所在地〒105-0004 東京都港区新橋5-10-5 10階
(2025年4月中旬から移転)
代表取締役丸岡 智幸
事業内容訳あり不動産の買い取り再販事業
公式HPhttps://www.nexwill.co.jp/
公式「ワケガイ」https://wakegai.jp/
公式「空き家のURI・KAI」https://uri-kai.com
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次