空き家問題は今や地方だけに留まらず、都市部でも大きな課題となっています。今や空き家の数は900万戸を超え、防災・防犯上の観点からも喫緊の社会問題。こうした中、解体工事のマッチングプラットフォームを運営する株式会社クラッソーネ(川口哲平CEO)は、100以上の地方自治体と連携協定を進め、実績を深めています。(自治体連携実績110自治体・2025年3月20日現在)
また、川口CEOが旗振り役となり、空き家の増加抑制に取組む「全国空き家対策コンソーシアム」を結成、川口CEOが代表理事に就任し、独自に専門ノウハウを持つ事業会社の知見を共有し、「空き家で困る人がいない日本に」を実現できるよう協働しています。
現在、相続に伴い解体工事も増加傾向ですが、一般の方からは、「解体工事をどこに選んだらよいか分からない」などの声もあったのが実情。その声に応えるため、川口CEOは、解体工事業者の一括見積サービス「クラッソーネ」の提供を開始、登録解体工事会社は2,100社以上、利用者は15万人を突破しています。
今回、現在の空き家、解体工事の現状のほか、「クラッソーネ」のサービスの特徴について、川口CEOに話をうかがいました。

株式会社クラッソーネ
代表者 川口哲平 氏
空き家900万戸で過去最多!深刻な社会問題化

――最近の空き家問題の所見からうかがいます。

総務省は、5年に一度「住宅・土地統計調査」を行い、このほど2023年10月1日現在の調査結果を公表しました。それによると、全国の空き家の数は住宅全体の13.8%にあたる約900万戸で人口減少や高齢化などを背景に過去最多で年々増加している状況に変化がありません。これからも空き家の増加が予想され、所有者に加え、近隣住民にも影響を与えますから、国として解決していかなくてはならない課題です。
各地方自治体も独自に空き家の調査を実施しています。当社も地方自治体と対話を続けている中で感じ取っている点は、どの地域でも空き家が増加していることです。地域によりますが、空き家の所有者は、近隣に居住していない事例も相応に多く、「親から相続したけれど、住む予定もないし、この家どうしよう」とお悩みになられる方もいらっしゃいます。
一方、近隣の方は空き家に対して、「草木も伸び放題になり、屋根の瓦も落ちて来る、鳥獣も住みついて困る」などを地方自治体に苦情を寄せています。そこでこの状況に当分の変化がない点が現在の見立てです。
空き家は人口の移動により、発生する


――以前、別のインタビューで都心部の周縁の空き家について見解を述べられていましたが、改めてその点について教えてください。



空き家のイメージは、人により見解が異なります。限界集落や地方の山間部の建物の空き家を、あるいは地方都市のシャッター街をイメージされる方もいれば、住宅街の真ん中に荒れている空き家を考える方とさまざまです。
そこで質問の趣旨について回答いたしますと、空き家の発生の主な理由は人口の移動によって生じると考えています。より駅の近く、仕事のある場所へと人が移動する現象が各地域で発生しているのではないでしょうか。また、ご高齢の方も離れた集落におひとりで住まわれるよりも、駅の近くのマンションに引っ越される方はいらっしゃるでしょう。
つまり空き家問題は、限界集落のような地方で限定的に発生している現象ではなく、各地域で人口が集約されている中で、逆に集約されなかった「過疎」の地域で空き家が発生していると分析しています。
たとえば、住みたい街ランキングで毎年、上位にランキングされる横浜市でも市内や中華街は大変な賑わいがありますが、市内でも中心街から離れると空き家が生じやすくなります。つまり都心の周縁部で管理されずに、不動産市場の流通にも乗らない空き家があると、倒壊の危険性や犯罪につながる可能性もあるなど、防犯・防災上、多くの問題を抱えることになります。
――クラッソーネさまのビジョンについては。



わたしたちは、実現したいビジョンとして『「街」の循環再生文化を育む』を掲げています。今、街自体が老朽化しており、どうしても使えなくなった建物を解体除去し、資源循環の流れに乗せることが大切です。それが当たり前にできるような社会を実現が当社のビジョンです。
解体工事業者の一括見積サービス好評
――次にビジネスモデルについても教えてください。



解体工事業者の一括見積サービス「クラッソーネ」を提供しています。消費者と解体工事会社の方にこのプラットフォームをご利用いただくことで、消費者の方からするとより安く、安心な解体工事会社を選ぶことができ、解体工事会社は新たな顧客から受注を獲得でき、売上増に貢献するビジネスモデルを目指しています。
サービスは2011年からリリースし、14年経ちました。解体工事会社は2,100社以上が登録し、ご利用者は累計で15万名を突破しました。Web上で物件情報、解体範囲、建物の種類、解体動機や解体予定の時期などを入力するだけで、優良な解体事会社最大6社を「クラッソーネ・お客様サポート窓口」から紹介を受け、解体工事会社とのご連絡、見積書の確認、ご契約まで全てWeb上で完結可能です。お急ぎの方でも最短1営業日以内にご希望に沿った解体費用の見積もりを入手できます。
さらに、「クラッソーネ」上で解体工事会社の口コミや実績も確認でき、「着手金等保証」「完工保証」「第三者賠償責任保険」の3つの保証がセットになった「クラッソーネ安心保証パック」により、はじめて解体工事を行うお施主様でも安心して解体工事が進められます。


――どのようなキッカケで「クラッソーネ」を立ち上げられたのでしょうか。



私がハウスメーカーの注文営業を担当していた際、解体工事について、「この金額でよいか分からない」「解体工事会社を比較検討したいが、どこで探せばよいかが分からない」との話をよく、お施主様の声をうかがっていました。
実は解体工事会社は地域工務店と異なり、ホームページを持たない会社も相応に多く、そもそも会社情報を公開していないところもあります。これは解体工事会社がハウスメーカーの協力会社として仕事をするケースが多いからです。
建設業界では一般的には多重下請け構造です。多重下請け構造の最下部に、多くの解体工事会社が存在しますが、この構造の中ではお施主様と解体工事会社が直接出会い、お施主様が解体工事会社を選ぶことは困難です。しかし、お施主様が直接、解体工事会社を選びたいとの需要もあることを知って、お声に応えるため、「クラッソーネ」を立ち上げました。
――「クラッソーネ」を使うメリットはどこにありますか。



お施主様に対し解体工事会社を直接ご紹介することで、多重下請け構造を解消し、解体費用のコストダウンを実現します。「クラッソーネ」ですと、すべての解体工事会社の見積書式を統一。お施主様が簡単に見積もりを比較検討できます。また、定量的な評価や口コミでは、「対応マナー」「追加費用」「工事品質」「工期遵守」「近隣配慮」の5項目を確認でき、解体工事会社を最終的に選定する判断基準になります。
――そもそも解体工事はどこに依頼すれば分からないというお声も相当あると思いました。そういう意味でお施主様から評価が高いのではないでしょうか。



解体工事は人生で何回も経験するものではありません。どこに依頼すべきか、相場観のほか、解体に紐づく土地や家財の処分方法なども網羅的にご相談に預かりますので、良い解体工事会社を見つけられたとの評価もいただいております。また、迷われた際に当社が第三者的にご相談に預かることも、お施主様からは「よりそってくれて良かった」と評価されています。
厳格な審査基準で優良な解体工事会社を選定
――登録会社数は全国No.1の一方、厳しい審査基準で知られています。この審査基準を教えてください。



解体工事会社の審査基準は当社内で設けています。まず改正建設業法の施行により、2019年6月1日以降に税込500万円以上の解体工事を請け負う場合、建設業許可「解体工事業」を受けることが必要です。そこで審査基準の一つに「解体工事業」の許可を受けているかを確認します。次に、反社会的勢力、風評、過去の違反履歴、与信をそれぞれチェックし、安心な解体工事会社かどうかを判断いたします。
お施主様は解体工事会社を選び、任せたはいいけれど倒産した場合、悪いことをされた、近隣に迷惑をかけたことは避けたいのです。そこでこうした一連のチェックをする意味としては、疑わしい解体工事会社はプラットフォームに乗せないように当社側としても心がけています。ご登録時だけではなく、解体工事会社がサービスを開始した時から、お施主様から定期的なサービス評価を集めており、その評価により継続されるべき解体工事会社か否かの判断をいたします。
連携協定実績が100自治体を突破!さらに強化へ


――このほど地方自治体との連携協定について100自治体を越えました。これは大変意義深いことですね。



地方自治体とクラッソーネが一緒になって解体除却を中心とした空き家対策を進めていきます。具体的には当社側から、家じまいに伴うリーフレットの提供、解体価格、土地の売却が分かるようなシミュレーションの仕組みの無償提供、相談窓口やマッチングサービスの地方自治体への無償提供が協定内容です。
協定は地方自治体がやりたくてもやれなかったことに手が届いている点に意義があります。地方自治体としても空き家を放置せずに対策をより強化したいとの思いは強いです。住みよい街をつくり、人口の流出を食い止めて、安心して住んで欲しいことは各地方自治体の共通している願いです。
しかし、荒廃した空き家があると住みやすい街への阻害要因になり、対処しなければならない考えはお持ちです。対処する過程で、地方自治体から空き家所有者に対して、通知文書を送るなど指導はされています。
空き家所有者もご迷惑をかけていることは理解しているので、「壊すのであればいくらかかりますか」「壊す解体工事会社を紹介していただけますか」との相談を地方自治体にされますが、これに回答することは難しいのです。一職員が民間の解体工事会社を紹介することはご自身の裁量を越えているからです。また、職員は解体工事のプロではありませんから、費用の相場を答えることも難しいです。そこに応えていくのが「クラッソーネ」をはじめとする当社の仕組みです。
地方自治体向けに新たなサービスをリリース開始


――最近、地方自治体向けに新たなサービスをリリースされましたが。



地方自治体向け空き家対策支援サービスに新たに「空き家迷惑度診断」と「固定資産税シミュレーター」という2つのサービスの提供を開始しました。これら2つの新サービスは既存サービス「すまいの終活ナビ」と連携し、利用者に提供中です。
「空き家の迷惑度診断」は、簡単に所有する空き家が管理不全空家等に指定される可能性があるかを確認でき、所有者が自身の空き家の状況を認識できるようにし、適切な空き家の管理を促進します。





「固定資産税シミュレーター」は、固定資産税の納税通知書に記載がある情報を入力することで、①解体後の固定資産税の上昇額②空き家を維持し続けた場合にかかる費用③解体後3年以内に土地を売却した場合の収支試算の3点を確認できます。





これまでも簡単に解体費用の概算額が算出される「解体費用シミュレーター」と、解体費用に加えて解体後の土地売却査定価格の概算額も算出できる「すまいの終活ナビ」を無料で提供し、空き家所有者の解体工事の検討促進を図り、地方自治体での業務効率化に貢献しています。
自治体との連携で成果も着実に表れる


――連携協定を通じてご相談も増えていると思いますが。



実際、状態のよくないものも含め、さまざまな空き家のご相談に預かっています。2023年11月に愛知県岡崎市との連携協定の取り組みの一環として実施した空き家対策セミナーでご相談をいただいたことで、解体を前向きに検討いただき、25年間空き家の状態で老朽化していた物件が2024年8月に解体されました。
岡崎市担当者は「空き家は所有者の持ち物なので、働きかけをすることしかできない。セミナーに参加し、前向きに決断してもらえたことを有難く思っている。効果的なセミナーが実施できてよかった。」と話しています。





次に、滋賀県米原市の所有者不明の老朽空き家を除却のケースです。所有者不明の空き家が老朽化して危険な状態だったため、隣の住民が買取り駐車場に活用したいと米原市へ申し出がありました。市が「相続財産管理人の選任申し立て」を実施し、売却。隣の住民が解体工事の見積もりを行いましたが、費用が高いため、市に相談。市と連携する当社を紹介され、解体工事を実施し、現在は駐車場として活用されています。
最後の埼玉県久喜市の事例では、空き家を解体すると固定資産税が上がるためそのまま放置された状態でした。久喜市からは今は除却の補助金が出ることと、久喜市の施策で空き家除却後、数年間は固定資産税を据え置く特例を出しています。それで解体され、不動産流通に乗りました。
――地方自治体との連携協定の今後の方向性についてはいかがですか。



日本全国の地方自治体は、1718市町村(790市745町183村)ありますので、全地方自治体と連携できれば望ましいです。当社が提供している仕組みは、地方自治体や空き家所有者にとっても必要ですから、どこの市町村でもご利用いただき、ともに空き家対策を推進することで、地方自治体が進める住みよい街づくりや当社が掲げているビジョン『「街」の循環再生文化を育む』にもつながっていきます。そのため、地方自治体との連携を積極的に行っていきたいです。


「全国空き家対策コンソーシアム」の設立の狙い
――「全国空き家対策コンソーシアム」を設立された理由を教えてください。



産官学が一緒に集まって、公民連携をしながら空き家対策を進めることが狙いです。空き家問題は社会問題化していますが、既存の枠組みであれば解決できないのが現状認識です。そこでクラッソーネという1民間企業の枠を飛び越えて、複数の企業と一緒に活動していきたい。参画された企業は、空き家対策を行っていますが、得意分野は異なります。その得意分野を各社が提供し、一緒に解決できる仕組みを共同でつくり、地方自治体の空き家問題をともに解決できる場ができれば望ましいです。
今、東京大学不動産イノベーション研究センターとさまざまな件で共同研究を進め、そのうちの一つに「空き家が街に与える経済損失」がありますが、地方自治体からも空き家の具体的なデータを提供いただいています。次にセミナーを積極的に開催し、空き家所有者に情報提供を行い、こうした活動を加速しながら空き家対策に寄与していきたい。
これまで、空き家の利活用を検討される際には、様々な会社に独力で1社ごとに声を掛けなければなりませんでしたが、コンソーシアムが設立されたことにより、空き家所有者のお悩みにワンストップで応えられるような受け皿になっていければと考えています。


AlbaLink社などさまざまなアライアンスが拡大
――株式会社AlbaLinkさまの業務提携など今後のアライアンスの方向性を教えてください。



AlbaLink社では買い取り再販を行っています。空き家対策のテーマは同じでも得意領域が異なったりしますので、ご一緒にやりたい。たとえば、お施主様が解体よりも再生して利活用されることを希望されるのであれば、AlbaLink社にお声がけをさせていただきますし、AlbaLink社が買い取った物件でも再生は難しく解体をした方が望ましいケースがあればご一緒に取り組むケースもあります。
AlbaLink社に限らず、ご一緒に進めた方が空き家解決がスムーズに行くケースは多々ありますので、協議しながらアライアンスを広げていきたい。不動産の買い取り会社、不動産仲介会社、さらには施工会社でも買い取りを行う企業があり、そのあたりの企業とはシナジーは強いと考えており、さまざまなアライアンスを模索中です。
解体工事費の上昇で検討を留保する事例も
――2025年は大相続時代のはじまりとの声もあり、それに伴い解体工事も増加するとの見解もありますが。



これまでは建てるために壊す解体動機が多かったように思えます。今後は、建て直しをせず、家じまいをするために解体する方が増えるように思います。確かにその点では解体需要は増えていくでしょう。一方、解体工事費は年々上がっており、これは燃料代、人件費の高騰のほか、2000年に建設リサイクル法が制定されたため、解体工事会社は建築リサイクルに本腰を入れています。
また、住宅は古いものと1980年以降のものでは当然後者の住宅性能が向上しているため、解体工事には従来と比較し、時間と手間がかかっており、以上の点も踏まえて全般的に解体費用がアップしています。その点をバランスよく配慮していなければ、空き家は取り残されてしまう危険性があります。
実際、見積もりをご覧になられた方の中には、「検討を留保します」とおっしゃる方はいます。逆に安くなるまで解体工事をお待ちになる方はおりません。それはこのままの状況が続くと安くならないことをご理解されているからです。
解体工事会社の業務の効率化もサポートへ


――今後の動向については。



地方自治体との連携について引き続き強化していきます。その中で「クラッソーネ」をはじめいろいろなサービスの利用を増やせれば望ましい。サービスについても「クラッソーネ」をより進化させながら、お施主様や解体工事会社双方により良い、プラットフォームとしていきたい。
空き家所有者からの観点では解体工事費用を少しでも安くしたい考えがあります。一方で、解体工事会社からの観点では、買いたたかれてしまうと、働き手がいなくなってしまいますので、解体工事業界とともに考えていくことは重要な視点です。そこで解体工事会社の業務が効率化することを検討中です。
今後、解体工事会社の積算や施工管理についてもより合理的にできるシステム開発を進めていきたいです。これまでもITを使って合理化する仕組みを構築してきましたが、解体工事会社の内部の業務に踏み込んでいます。
会社概要
社名 | 株式会社クラッソーネ |
住所 | 愛知県名古屋市中区栄2-11-30 セントラルビル5階 |
TEL | 052-589-8085 |
代表者 | 川口哲平 |
公式HP | http://www.crassone.co.jp/ |
公式Facebook | https://www.facebook.com/crassone.recruit/ |
公式X | https://x.com/crassone |
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