不動産の買取再販事業を展開している株式会社AlbaLink(河田 憲二社長)は、空き家、再建築不可物件などの「訳アリ不動産」を買い取り、それを個人投資家に再販するビジネスモデルで確実に業績を伸ばしています。
その他にも、空き家などの訳あり不動産を放置する危険性を伝えるため、 「訳あり物件買取ナビ」「空き家買取隊」 といったWEBサイトの運営も行っています。
2024年12月期では売上高が前期比81.6%増の54億40百万、経常利益は同30.8%増の5億21百万円と好調が続き、2025年12月の通期業績予想では、売上高が同40.5%増の76億42百万円、経常利益は同12.3%増の5億85百万円とさらに好調が続きます。
現在、支店は15拠点あり、今後も全国的に支店を開設する方針です。さらにこれまでは個人投資家に再販するビジネスから、空き家を自社再生し、民泊などに活用するなど新たな収益モデルとしてトライアル的に実施しています。
これから高齢化が進み、ますます空き家や再建築不可物件が増えることが予想され、「空き家をゼロにする」をミッションとするAlbaLinkの存在感が高まっています。そこで今回、AlbaLinkの河田 憲二社長に空き家問題などの訳アリ不動産について話をうかがいました。

株式会社AlbaLink(アルバリンク)
代表取締役 河田 憲二 氏
流動性の低い「訳アリ不動産」を扱う

――株式会社AlbaLinkさまのビジネスモデルの内容について教えてください。

不動産の中でも流動性の低い「訳アリ不動産」を扱っているのが一番の特徴です。ビジネス構造としては、買い取りさせていただいた物件を販売し、その差分が利益になります。訳アリ不動産を売りたいお客様と買いたい個人投資家のお二方の橋渡しをしている構造です。そこで当社のミッションとしては、「空き家をゼロにする」ことを掲げています。
次に社内にはマーケティング部署もあり、インターネットやデジタルマーケティングの力を活用し、オンライン上で反響をいただいていることも大きな特徴で、オウンドメディアやリスティング広告を通じて、お客様から直接情報をいただきます。当社の営業スタッフがお客様にヒアリングし、交渉をした後に条件を提示し、お客様からご了承を得られれば買い取りをいたします。個人投資家は当社から物件を買い取り、再生し、住んでいただけるお客様を探し、毎月の家賃で収益化を目指します。
――中には1円でもいいから引き取って欲しいという要望も多いのでしょうか。



多いですね。一見するとなかなか難しい事例も個人投資家がアイディアを振り絞り、ご自身でDIYされ、物件を再生し数字を合わせ、賃貸マーケットに出していきます。
年間の仕入れ数1,513件、販売数は1,352件に


――年間の買い取り件数と販売件数については。



問い合わせ数は1万4,050件/年、仕⼊数は1,513件/年、販売数は、1,352件/年で、1年未満の物件保有期間は、90%です。当社は空き家を一軒でも減らす方針でビジネス展開していくので、これらの件数を今後とも増やす方針です。総務省は、5年に一度「住宅・土地統計調査」を行い、2023年10月1日現在の調査結果を公表しました。それによると、全国の空き家の数は住宅全体の13.8%にあたる約900万戸で人口減少や高齢化などを背景に過去最多となっています。そのため、以上の件数については年々増加していきます。
地方自治体と積極的に連携


――地方自治体との連携も推進されていますが。



地方自治体との「空き家対策に関する連携協定」の締結件数は9件(2025年3月7日時点、千葉県市原市、同⽩⼦町、茨城県土浦市、静岡県南伊⾖町、長野県信濃町、新潟県⼩千⾕市、富⼭県滑川市、兵庫県神河町、⼤分県⽵⽥市)です。全ての地方自治体は、1,788 団体(47 都道府県、20 政令指定都市、東京都 23 特別区、1,698 市町村)ですから、これから本腰を入れて地方自治体との連携を強化し、事例を増やしていきたい。
――地方自治体とはどのような連携を行っていますか。



地方自治体によって異なります。共通した事例では、空き家バンクに掲載できない物件に困っています。または空き家バンクに掲載しても流動性に変化がない事例もあります。所有者の立場ですと、金額よりも手放したい意向が強いので、その点についてお手伝いして欲しいとの要望があります。
――連携協定で興味深い事例を教えてください。



富山県滑川市との連携協定での事例を紹介します。1932年(昭和7年)に建築され、「エビス屋百貨店」「高木屋」として長く地域の方に愛されてきましたが、近年は空き店舗のままの建築物が市内にあります。市が企業誘致を目指し、大規模建築物の利活用支援として期待されており、当社が建物を取得し、2025年3月までに修繕を完成させ、まちなか再生の拠点として当社を含めてサテライトオフィスとなります。





次に竹田市での連携では制度を2つ活用。一つは、国土交通省の「所有者不明土地等対策モデル事業」※に採択され、2つ目は、「地域活性化起業人」(副業型)を活用しています。市内の空き家再生では専門的知識が求められますので、当社の社員が月に最低1回、竹田市を訪問し、現地でノウハウを伝え、最終的には竹田市の職員が自走できるように伴走支援を展開中です。
※所有者不明土地等対策モデル事業・・・所有者不明土地の「利用の円滑化の促進」と「管理の適正化」について対応を図るとともに、これらの取組を支える「推進体制の強化」のための措置を講じるもの。
※地域活性化起業人・・・三大都市圏に所在する企業と地方圏の地方自治体が、協定書に基づき、社員を地方自治体に一定期間(6か月から3年)派遣し、地方自治体が取り組む地域課題に対し、社員の専門的なノウハウや知見を活かしながら即戦力人材として業務に従事することで、地域活性化を図る取り組み。


――地方自治体との連携はどのあたりまで増やしていきたいとお考えですが。



今、地方自治体とヒアリングや意見交換させていただくと、空き家が多く、対応しきれない状況とご回答されることが多いです。極論ですが、すべての地方自治体と連携を進めたいです。どこまで実現できるかは分かりませんが、社内の頑張りしだいです。近視的には現在15拠点のあるエリアでの地方自治体と連携を進めていきますが、最終的にはすべての都道府県で1支店を置く計画ですので支店開設後に近隣の地方自治体との連携を推進していく考えです。
また、「空家等対策の推進に関する特別措置法」は2023年12月に改正法が施行され、これに基づき、国土交通省は「空家等管理活用支援法人」制度を創設しました。これは、民間法人が、公的立場から活動しやすい環境を整備し、空き家対策に取り組む市町村の補完的な役割を果たしていくことを狙いに設けられました。
市町村が、空き家の活用や管理に取り組むNPO法人、社団法人、会社などを「空家等管理活用支援法人」に指定します。当社もこの制度を活用し、複数事業者のうちの一つとして地方自治体と連携するケースも増加中です。そこで地方自治体との連携は単独で行うことに限定しているわけではありません。
新規部門を設置し、物件の自社再生を検討



元々、創業当初は当社が買い取った後で物件の再生も手掛けていましたが、現在は、物件を引き渡した後に、個人投資家ご自身で実施されています。
ただし、今後は当社の規模拡大に応じて、自社で再生し、一般賃貸付け対応も検討しています。たとえば民泊物件として再生し、宿泊業に進出する構想も抱いているところです。今、政府は二拠点居住の推奨を図っていますが、地方の居住物件は、ほぼ分譲ですが購入する選択肢は難しいです。仮に気に入ったエリアがあっても、いざ購入となると金銭面も含めて迷います。二拠点居住で重要な視点はそのエリアに賃貸物件があることです。これまでは物件を買い取った個人投資家が不動産賃貸事業を進めてきましたが、それを当社が今後行うことを検討しています。
5つのオウンドメディアで集客に注力


――オウンドメディアに大きな強みがあるとの評価があるとうかがいました。



集客では、デジタルを活用し、当社は5つのオウンドメディアを運営しています。各メディアにおいては、空き家を始めとする流動性の低い物件に特化した情報を提供中です。
オウンドメディアでは当社で記事をコツコツと空き家の売却方法、再建築物件の活用方法などの解説記事など、お客様にとって意味のある内容を執筆し、それで当社のことを知っていただき本業の仕事につないでいます。お客様も納得感をもってお問い合わせされますので、これからもオウンドメディアに注力していきます。
2028年末に都道府県で全支店網を構築へ
――支店も驚異的なスピードで増えていますね。



当社は、本社、東京支店、千葉支店、つくば支店、大宮支店、横浜支店、名古屋支店、大阪支店、博多支店、高崎支店、札幌支店、静岡支店、宇都宮支店、京都支店、神戸三宮支店、熊本支店と15拠点あります。(2025年3月8日現在)
当社はマーケティングを軸に事業を展開しているので全国から物件の案内が来ます。そこで面で日本列島を制覇する方針で、関東に大きな事業の塊があるほか、他の重要のエリアでは北海道、東海、関西、福岡があります。その他北陸地方など隙間のエリアがありますのでこれをどう埋めていくかが課題です。最終的には東北ブロックなどブロック編成も考えていますが、今はその途上にあります。今のところは主要都市に出店し、そこをハブとして稼働させる方針です。
そのため、今後の展開を考えると、買い取り件数や販売件数もさらに伸長し、これからの10~20年単位ではタッチできる物件はますます増加すると見込まれます。
上場により最短で知名度や信用度が向上の効果


――上場も達成されたとのことですが。



2023年11月29日に、東京証券取引所 TOKYO PRO Marketに上場しました。空き家の処分にお困りの方に安心して不動産を売却いただけるような会社になることが必要と考え、最短で当社の知名度・信用力向上を目的にTOKYO PRO Marketへの上場を選択いたしました。
地方自治体の職員やお客様からの話や採用面、金融機関とのやり取りを通じて、上場していることへの信頼感は高いと感じている次第です。また、常に注目されていますのでいい意味での緊張感を抱いています。上場後、1年以上経ちましたが良かったと思います。
株式会社クラッソーネと業務提携も
――解体工事の一括見積もりサービスを運営する「株式会社クラッソーネ」さまと業務提携されましたが。



クラッソーネも当社も上流のテーマとしては「空き家問題をどうするか」で共通していて、その手段としてクラッソーネは、この物件はさすがに使用できないと判断されたところを解体除却され、一方当社は建物をなるべく利活用するため、個人投資家におつなぎする方向のポジションを取っています。
違う領域ですが、同じ方向を向いているので提携に至りました。提携の内容は単純に、解体も要請されるお客様にはクラッソーネにおつなぎしますし、クラッソーネのお客様で、すぐ解体に入るのではなく物件を再利用したいとのご希望があれば、当社に、「こういう方がいらっしゃいます」と連絡が入ります。
また、全国空き家対策コンソーシアムにも加入しましたが全国で空き家数は900万あり、一企業で対応するのは困難です。そこで空き家問題で志を同じくする企業が力を合わせて一緒にやっていくことに大きな意味がありますので、2024年2月から全国空き家対策コンソーシアムに参画させていただきました。
これからの空き家での問題について


――話はやや変わりますがどの都市レベルになると空き家に困るケースが増えて来るのでしょうか。



空き家の件数としては東京都世田谷区が一番多いのですが、私たちが対応するところは、「売れなくて困っている」という方々が対象です。世田谷区の空き家所有者は、「空き家があるけれど、困っていない。とりあえず持っておこう」という方が多いと想定できます。世田谷区の空き家は、市場に出せば売れますから、特に困りません。
一方、市場に出しても売れない空き家は全国にあり、人口30万未満の都市の空き家はほぼすべて対象になると見ています。これは少子高齢化や人口減少が続いていますので、二世代・三世代が実家を相続しても、空き家に住まう選択をされない方が多いのでしょう。どの地方自治体も空き家については困っていますし、流動性が低い不動産になっています。
――これから人口減少や少子高齢化が続くとともに、流動性が低い物件も増えると思いますが、これをどうご覧になられますか。



人口は確かに減少しますが、一方、世帯数は踏みとどまっていくと予想しています。これは多世帯で居住していた時代から、核家族へと移行し、DINKs(ディンクス)や単身世帯が増えているためです。そこで当社が空き家を賃貸物件として提供できれば、人口減少に怯えることなく、不動産物件の必要性はまだまだあります。
次に外国人流入はより高まると想定しており、これは日本への移住と観光面の双方が増えていくと考えられます。観光の訪日外国人に対しては、当社が空き家を再生し、民泊などの活用なども考えられます。
次に外国人の移住、高齢者、生活弱者、居住弱者の方もこれから増えていくでしょう。築年数は古いですが、物件を再生することにより、お住まいとして提供可能で、これからこの点についての需要が高まっていくでしょう。お住まいに関する社会問題の解決も求められることも多いため、人口減少が顕在している現在でもそこまで悲観的に見ることはありません。
買い取りと活用の収益で2本柱を構築へ
――最後に今後の方針を



今後は買い取った訳アリ不動産をどう活用するかがカギになります。今は、買い取った不動産を投資家に再販するビジネス構造ですが、これから訳アリ不動産の買い取りが伸びていくとともに、個人投資家の数も伸びていかなければこのビジネスモデルは成立しません。そして現実的には個人投資家の数もどこかで伸び悩みになると想定されます。
そこで今後は、空き家を買い取ってどう市場のニーズに応えられるかが課題になります。つまり空き家をどう利活用し、収益を上げるステージに入ります。もしこのノウハウが確立し、個人投資家にこのノウハウを普及していけば、もっと投資される方が増え、市場拡大につながるいい連鎖が生まれます。
当社としては民泊をトライアル的にスタートしてみようと動いています。ただ、活用するだけでは持続性やサステイナブルを目指すことは難しいので、今後は、民泊や賃貸付けなどの新たな空き家活用方法を模索していく所存です。


会社概
会社名 | 株式会社AlbaLink(アルバリンク) |
本社住所 | 〒135-0042 東京都江東区木場二丁目17番16号 BESIDE KIBA 3階 |
TEL | 03-6458-8135 |
代表者(代表取締役) | 河田 憲二 |
公式HP | https://albalink.co.jp/ |
公式X | https://x.com/AlbaLink2011 |
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