【東京・一般社団法人日本ホームステージング協会】家を片付け、家具や小物を配置し、不動産物件の価値をあげる手法に注目

『第8回 ホームステージングコンテスト』受賞者・【売買部門】*グランプリ*大川 佳林様(関西不動産販売株式会社) 

不動産の売却物件や空室の賃貸物件をハウスクリーニングできれいにするだけでなく、家具や小物を配置し、物件の価値をあげ入居を促進する手法をホームステージング®といいます。また、住みながら家を売却する場合は、部屋を片づけて小物などで魅力的な空間を演出することもホームステージングといいます。

アメリカ発祥の手法ですが、最近では不動産業界、建築・リフォーム業界、家具・インテリア業界などでも、ホームステージングを導入するようになってきました。

杉之原冨士子さんは、30年程前に運送会社に勤務し、引越し、遺品整理、お片づけの現場で奔走していましたが、あるきっかけからホームステージング®に出会い、その手法に着目。普及促進のために、「一般社団法人日本ホームステージング協会」を2013年8月に設立し、代表理事に就任しました。同協会では、ホームステージング®の知識や手法を学ぶホームステージャー資格認定を行い、2024年には資格取得者が5,000人を突破しました。2023年の2級資格取得者の業種別では、ホームステージング業の受講が非常に多くなっており、新しい職業として確立しつつあります。

今回は、一般社団法人日本ホームステージング協会の代表理事の杉之原冨士子さんにホームステージング®の魅力や職業としてのやりがいについて話をうかがいました。

一般社団法人日本ホームステージング協会

代表理事 杉之原冨士子さん

目次

不動産売買・賃貸など多くの物件に導入

一般社団法人日本ホームステージング協会の代表理事の杉之原冨士子さん

――ホームステージング®という言葉をはじめてうかがいますのでこの言葉の意味を教えてください。

杉之原冨士子さん

ホームステージング®とは、不動産物件をより魅力的に見せる空間演出で、売却予定の物件や空室の賃貸物件にホームステージングを行うことで、短期間で入居促進につながる効果的な手法として高く評価されています。「片づけ」「掃除」「インテリア」を基本とした知識やスキル、関連した廃棄や保管などを組み合わせることで、住まいや暮らしに関わる様々な業界でホームステージング®を活かすことができます。

 ホームステージング®は、アメリカで生まれた手法ですが、アメリカと日本では住環境や生活スタイルの違いがあり、日本独自のホームステージングの必要性を感じ、2013年8月に日本ホームステージング協会を設立し、これまでの現場経験などを基にテキストを作成した認定資格講座を通じて10年以上ホームステージングの普及促進活動を行ってきました。

――一般社団法人日本ホームステージング協会設立のキッカケは。

杉之原代表

当時、引越し営業でお客様の家に見積に伺った時に、荷物が多く、片づいていない家がとても多いと感じていました。特にご高齢のお宅は荷物が多く、「この荷物全部は新居に入りませんよ」とお話するのですが、「捨てられないので、全部持っていきたい」とお願いされ、せっかくの新居が荷物でいっぱいになることも多々ありました。そこで、私は、引越し前に不要なものを整理することで、新居で暮らしやすい生活を実現できると考え、運送会社の中で社内ベンチャーとして片づけの会社を立ち上げました。

そんな時に、お客様から「家を売りたいんだけど、忙しくて片づける時間がない。内覧の日程もせまっているので、売れるように片づけて」との依頼が入りました。その部屋は、早期成約に至り、お客様にも大変喜ばれました。これは「今までにない不動産売却の新しいサービスになる」と思ったのです。この事例をもとに不動産会社向けに“売却のための片づけサービス”を提供することにしました。しかし当初、不動産会社から「お客様に片づけサービスを進めるのは、言いだしづらい」と言われ残念ながらほとんど広がりませんでした。

中古不動産をより流通するお手伝いをしたい

ホームステージング®の手法で部屋も美しく

――どのようにこのマイナスのイメージを払しょくされましたか。

杉之原代表

「片づけ」ではない、サービス名を捜している時に、アメリカでは、不動産を販売する際は、家の価値を上げてより高く売れるようにする「ホームステージング®」という手法があることを知りました。これが、ホームステージングの出会いです。このホームステージング®を広めれば、ネガティブなイメージはなくなると思いました。そこで、「新しい不動産の売り方」として、ホームステージング®の手法を多くの方に学んで頂くために、一般社団法人日本ホームステージング協会設立に至りました。

――日本では新築住宅を好まれる方が多いですが、ホームステージング®の手法が広がれば、中古住宅も大きな価値を見出す方も増えて来ると思いました。

杉之原代表

現在、中古住宅流通促進の新しい販売手法として、日本の住まいや暮らしに合わせた日本版ホームステージング®の普及活動やホームステージャーの育成を行っています。

具体的には、片づけ、掃除、インテリア、小物の活用、不用品処分や家財保管など物流の知識、遺品整理など日常生活でも役立ちます。職業として、活用する場合は、認定資格講座を受講し、認定試験に合格することでホームステージャーの資格が得られます。

知識や手法を学ぶ「ホームステージャー」の資格を認定

研修室で実技実習のようす

――次にこの資格者「ホームステージャー」の解説を。

杉之原代表

アメリカでは、ホームステージャーがホームステージング®を行うことが一般的なため、日本でもそれが職業として確立していくことを目指していきたいです。インテリア、片づけなどは女性の得意分野なので、女性活躍が期待できると思っています。

最近では職業ポータルサイトでも、「ホームステージング」と検索するとホームステージング会社などのホームステージャーの求人が出てくるようになりました。ホームステージャーとして仕事に従事する方が日本でも増えるのは、私たちにとっても大変嬉しいことです。

――ホームステージャーの属性はいかがですか。

杉之原代表

当協会が作成した、「ホームステージング白書2023」で、ホームステージャー資格を取得された方は、ホームステージング業、不動産仲介業、不動産管理業と続きます。このデータで注目していただきたいのは、ホームステージング®を専門に行う会社に勤められている方が当協会の資格を取得されていることです。そのほか、住まいや暮らしに関わるさまざまな業種の方々が資格を取得されています。

ホームステージング®を行う企業も増加 出典: 「ホームステージング白書2023」

――資格取得者にリフォーム業が上位に挙がっていました。昨今、リフォームも流行っていますが、物が多いとリフォームもできない話も聞きますね。

杉之原代表

リフォームを行うためにはその場所の荷物を移動しなければなりません。不要なものも出てくるでしょう。ですから、リフォーム前に片づけや整理をする必要が出てきます。モノが多いとなかなか自分だけでは面倒でリフォームしたいけど、荷物のことを考えると着手できない。という声もお聞きします。以前リフォーム予定のお客様から、片づけの際に寄りそいながら、アドバイスするホームステージャーに大変感激したという言葉は、今でも忘れられません。

ホームステージャーのそれぞれの資格

杉之原代表

まず2級は、ホームステージング®の基本的な入門講座で、片づけ、掃除、遺品整理やインテリアなどの基本がぎゅっと詰まっている内容です。ホームステージング業、インテリアコーディネーター業、リフォーム業とさまざまな業界の方が受講しています。

次に1級は、HOMEとLIFEに分かれ、HOMEはインテリアの演出から物件の撮影方法、家具家財の搬入、搬出方法などトータルにホームステージング®を行なえるプロフェショナルな人材を育成するための資格です。すでに、現場経験のある方は、1級チャレンジで2級を受講せずに、直接1級を受けることもできます。

さらにLIFEは、住みながら家を売却する際の居住中のホームステージング®で、片づけや掃除のスキルを磨きます。また、生前整理や遺品整理などは実技実習ができる専用のステージングルームを使って、ロールプレイングで講師から直接レクチャーを受けることができます。

研修室で実技実習のようす

2025年は空き家の課題解決に貢献したい

――2025年の活動は、「ホームステージングで空き家の課題解決に貢献する」をテーマにされるとのことですが。

杉之原代表

2024年4月に総務省が公開した全国の空き家数は約900万戸となり、毎年空き家が増加している状況です。日本ホームステージング協会では、空き家を利活用することだけでなく、空き家発生の予防につながる活動を同時に進めていく必要があると考えています。

実は引越し営業で遺品整理の現場を担当する頃から、年々空き家が増えていると実感していました。高齢者住宅に入居されると、これまで住んでいた家が空き家になってしまったり、荷物が放置されたまま実家のご両親が亡くなられ、遠方に住む親御さんから実家の荷物を片づけて欲しいという依頼も増えていました。

杉之原代表

そこで2013年に『片づかない! どうする我が家、親の家―ミドル世代の暮らし替え整理術』(杉之原 冨士子 (著)、日本ホームステージング協会 (監修)、クラブハウス発行)を発刊しました。この当時は親の家の片づけについては、あまり問題視されていませんでしたが、私たちは高齢のお客様の家をずっと見てきましたので、現場から少子高齢化時代に親の家の片づけや空き家は大きな社会問題になるのではないかと感じていました。

この本がきっかけとなり、NHK総合で放送されている朝の生活情報番組『あさイチ』で親の家の片づけについて解説することになり、徐々に「親の家の片づけ」へ関心を寄せる方が増えてきました。

杉之原代表

親の家の片づけは今後も増えていくでしょう。そして、お子さんの「使っていない物をなんで捨てないの」親の「もったいないから物を捨てたくない」というお互いの価値感の違いがぶつかり、親子のバトルも残念ながら増えていくでしょう。ケンカをすることで、片づけ作業は止まってしまいます。

そんな、最悪のケースにならないように、私たちホームステージャーが間に入り、クッション材になりたい。だからこそ知識やスキルのあるホームステージャーが必要なのです。親の家の片づけを通して、親の子供の頃や若い時の事など思い出話をすることで、今まで知らなかった親のことを知ることができます。それは、今後、かけがえのない時間として一生の宝物になるはずです。

親の気持ち、子の気持ちがコミュニケーションによってうまくいき、実家が快適に暮らせるように変わることで、その先にある相続問題などが自然と解決していくことを期待しています。親には安心で安全な暮らしをずっとしてほしい、本当は、それが子供の願いのはずです。そして、それは親の家の片づけの目的です。今後は、シニア世代の暮らしに関連した取組みをしていきたいです。

全国のあちらこちらで空き地が放置されている

――具体的にはどのような取組みをされていきたいですか。

杉之原代表

2019年11月に『ディズニー マイストーリーノート もしもの時に家族を結ぶ』(日本ホームステージング協会 (監修)、講談社発行)を発刊しました。本書は、自分史の整理、この先の目標、公的記録、その他重要事項のメモ、緊急時の際のメモを記録でき、1冊でご自身の歴史、夢、もしもの時に伝えたいことをまとめることができるエンディングノートにも使えるものです。

このマイストーリーノートを作った大きな理由は、人はそれぞれみんな違った人生を歩んでいます。あなたが主役の本をあなた自身でこれまでの人生を思い出しながら、あなたの物語を残してほしいと思ったのです。これまでの過去を振り返り、現在、これからの未来をつづることで、心の整理、物の整理をすることができます。
エンディングではなく、マイストーリーを綴ってほしいという思いを込めてつくりました。

また、お子さんも一緒にマイストーリーノートの作成を手伝うことで、親のことを客観的に見ることができるようになるでしょう。そして親子のコミュニケーションが深まり、これからの住まいや暮らしを見直すことで、資産や家のことなどを考えるきっかけになることを願っています。

仲のいい家族でも財産や家の片づけについて話すことは大切

――スマクラ健康診断の取組みについても教えてください。

杉之原代表

現在の住まいと暮らしを見直すことにより、「今だけでなくこれからの住まい」を意識することが空き家予防につながると考えています。そこで、シニア世代のための住まいと暮らしの健康診断ができる『セルフチェック・スマクラ健康診断』を発表いたしました。

いつかは直面することになる家や実家の問題を、50歳を迎えるプレシニアのうちから、身体の健康診断と同じように、自身の問題として意識していただくことを目的とした「スマクラ健康診断」です。

杉之原代表

お子さんが親に対して気軽に、「こんなセルフチェックがあるからやってみない」と話しかけられるツールにしたいと思い、「スマクラ健康診断」を作成しました。現在、40代~70代の方100人に回答を頂きましたので、結果をまとめました。属性は女性81名、男性17名です。

100人のうち60人が「物が多い」「物が非常に多い」と回答され、その中で片づけが「やや苦手」「苦手」が35人でした。また、今の家、または実家が近い将来空き家になる可能性がある「非常に高い、すでに空き家」「いずれ空き家になる」合わせて36人となっています。心のどこかで空き家になることを認識し、問題意識を持っている方が多いことが分かります。

スマクラ健康診断の狙いはシニア世代やその子供が今の暮らしを見直すことで、これからの暮らしが変わること、その先の自宅の相続をスムーズにし、空き家にならないような取組みを図って欲しいという事です。

シニア世代の暮らしを見直すシニアホームステージング企画室では、シニア世代のスマクラ相談会の開催や『ディズニー マイストーリーノート』の書き方の指導なども行っています。

空き家の物を片付けて不動産の流通まで進めたい

【賃貸部門】 グランプリ 湯上うらら様(株式会社ベイスリーアセット Urara Home Staging)(『第8回 ホームステージングコンテスト』受賞) 千葉県の古民家民泊で、ホームステージング®を行った

――今後の展開については。

杉之原代表

最近では、民泊にホームステージング®をして、価値を上げる試みも展開されています。空き家+ホームステージングで、残置物の片づけや家具小物で魅力的に空間演出をすることで空き家の活用ができれば、空き家の数も少なくなり、中古住宅などの流通も活発になっていくことでしょう。その意味でホームステージング®は多くの可能性を秘めています。

2025年の具体的な活動では、6月第2週(6月9日~14日)を「ホームステージング週間」とし、ホームステージングを一般の方にも認知してもらう企画を行います。空き家活用促進に貢献する活動として、空き家+ホームステージングの実施やシニア世代の住まいと暮らしを見直すシニアホームステージング企画のセミナーで空き家防止に貢献する活動を行います。

さらには、協会設立13年目を迎え、周年事業として、ロサンゼルスへ米国不動産及びホームステージング視察研修を実施することが活動の目玉になります。

団体概要

団体名一般社団法人日本ホームステージング協会
住所東京都江東区木場6-4-2 KIビル4F
TEL03-6810-5708
代表者代表理事 杉之原冨士子
公式HPhttps://homestaging.or.jp/
公式Facebookhttps://www.facebook.com/homestaging.or.jp/
公式Xhttps://x.com/homestaging2013
公式Instagramhttps://www.instagram.com/japan_home_staging_association/
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