【愛知県・岡崎製材】木の端材から新たな価値を創造し、地元大工の育成で「愛知を代表する企業100選」に選出 

三河地域で100年を超える老舗木材屋で有名な岡崎製材株式会社本社

愛知県岡崎市の老舗材木屋である岡崎製材株式会社(八田欣也社長)は、三河エリアを中心に木材・住宅資材などを販売する他、リフォームや建築施工、不動産など住まいに関わる多種多様な商品・サービスをワンストップで提供しています。 

創業100年にあたる2017年にはSDGsの取組みとして木の端材から新しい価値を創造・提案する“HAZAI® project”を推進、多様な商品を販売しています。また、事業理念として、地元密着の「最適住環境企業」を掲げています。 

業界の担い手確保・育成の視点から「大工育成塾」も開設、三河エリアの工務店が見習い大工を塾に派遣し、大工の育成を図っています。 

こうした一連の取組みや様々な角度からのチャレンジにより、成果を上げ続けている点と企業文化を含む将来性を高く評価され、地方創生に特化した信頼性の高いメディア「Made In Local」の主催する「地域を代表する企業100選」で、「愛知を代表する企業100選」に選出されました。 

今回、この認定を機に、岡崎製材の八田欣也社長に話をうかがいました。

岡崎製材株式会社

八田欣也社長

目次

木材販売から、リフォーム、新築工事、不動産と多角化に成功 

インタビューに応じた、八田欣也社長

――まず岡崎製材株式会社さまのご紹介と歴史について教えてください。

八田 欣也氏

1917年(大正6年)に私の曽祖父で、木挽き職人の八田常次郎は、製材や材木商を創業しました。その後、木材市場を開設し、原木丸太から、製材品も扱ってきました。名字の八田にちなみ、毎月8日、18日、28日を市売日とし販売していました。現在、私で4代目となり、5代目は私のもとで修業中です。 
 
木材は住宅資材販売の主力としていましたが、その後ベニヤ板などの新建材やトイレ、キッチンなどの住宅設備機器の取扱いを開始し充実していくことにより、地域において有力な販売店としての地位を占めています。木材についてはヒノキ、スギ、松など一般材はもちろん、さらに特殊材であるケヤキ、屋久杉、黒檀(コクタン)などの各種銘木(めいぼく)※の扱いを、その魅力に取りつかれた私の父が、拡大していきました。

※銘木・・・木材でも美しく、稀少な杢があるものや、材種自体に希少価値のあるものを指す。

八田社長

また、父の時代にはメインの木材卸業に加え、小売業を始めることになりました。私は銘木及びインテリア関連の仕事をした後、同時期に岡崎へ戻り、小売業及び住宅設備機器のショールームの運営を始めました。そこでシステムキッチンなどを販売する中、「取り換え需要」から内装工事・リフォーム工事が自然発生し、さらにはリピーター顧客から新築工事の依頼が出てきて、建築分野全般に参入することとなりました。

大工育成塾、「HAZAI® project」で高い評価

「HAZAI® project」から生まれたカッティングボード

――地方創生メディア「Made In Local」の選定する「地域を代表する企業100選」にて、愛知エリアの企業100選の認定を受けました。

八田社長

これは大変光栄なことです。今申し上げたように事業を多角化した歴史とともに少し変わったことも実施しています。銘木は丸太を製材し、家具として加工してユーザーにお届けしていますが、例えば3mの材料を2mの寸法に合わせ切っていく作業があります。ここで切り落とし余った材料を「端材(はざい)」と呼びます。これが一般材であれば廃棄してもよいのですが、単価で10倍以上もする高価な銘木を捨てるにはあまりにも惜しいし、もったいないです。 
 
 そこで、創業100年にあたる2017年にはこれらの端材を無駄なく活かし、新たな価値を創造することとし、SDGsに賛同する形で「HAZAI® project」を推進することとなりました。「端材」を活用した木製品では椅子、カッティングボード、時計、木皿などがあります。いずれも銘木を原材料としていますから、高級感あふれる品々です。

同業者から太鼓判「岡崎製材ほど無垢材を保有している会社はない」 

無垢材の在庫量も日本トップクラスを誇る

――無垢材の在庫量も日本のトップクラスとうかがいました。

八田社長

極めて特殊な無垢材がほとんどですが、針葉樹では屋久杉、木曽檜などのブランド銘柄の樹種を持っています。また、圧倒的に多い広葉樹は国産材ではケヤキ、トチ、クス、輸入材だとブラックチェリー、ウォールナット、モンキーポッドほか国産材と輸入材はほぼ同等比率で、100樹種以上扱っており、主に、テーブル天板とカウンター材を5万枚の在庫を持っています。 
 
ちなみに全国でも広葉樹を扱っている会社は年々、少数に限られてきています。また、各地の銘木市場が次々と閉鎖する動きもあり、事実上残っているのは岐阜と大阪の2市場といえます。当社の製材部門では丸太を製材し、そのうちの一部を自社保管。大多数はこの2市場に毎月出品され、月に数百枚の製材品を販売しています。一方、製材品を市場で購入することもあり、父の代から70年の間、買い集めたものも合わせ、愛知県内に点在する倉庫7カ所に置かれている膨大な在庫数が5万枚になっているという訳です。 
 
弊社には、特殊材を探して全国各地から来社される同業者の方も数多いのですが、どの方もおっしゃるのは、「全国色々見てきたけど、一番持ってるね」「ダントツ日本一だね」「どこにもなかったものがここには有ったよ=無いものが有る」と言われています。

大工減少で危機感 「大工育成塾」を開設

大工人口は2000年には60万人、2020年に30万人に2035年には13万5166人と、2020年の半分以下に減少するといわれている

――大工さんの育成にも評価が集まったようですね。

八田社長

どの地方にも共通していますが、職人さんが減少していて、特に大工さんが顕著です。そこで思い切って「大工育成塾」を開設してきましたが、それを認めてもらったことがとても嬉しく思います。

――この「大工育成塾」というのは。

八田社長

岡崎製材が事務局を務める「優良住宅ねっと愛知」が、国土交通省がすすめる事業※に参画する形で、若手大工の育成に取り組んでいます。同事業への参画は三河地域の団体・企業としては初。「大工育成塾」と称して実施し、地域の新人大工が参加しており、今年で4年目を迎えています。

※「木造住宅・都市木造建築物における生産体制整備事業(大工技能者等の担い手確保・育成事業)」

八田社長

座学を行いながら、毎回、実験棟を使っての実践的な技術指導や建て方研修や、断熱気密の施工法を習得していきます。地域の工務店が新人大工を派遣し、ここで一通りのことを学び、一人前の大工にする一助をします。 

目的は、大工の地位向上と地域活性化に寄与すること。大工の高齢化や若手の離職、就業者減少に歯止めをかけ、さらに、地域に若手・大工仲間の和(輪)を広げることを目指しています。建設経済研究所の推計では、大工人口が2035年には13万5166人と、2020年の半分以下に減少する可能性があると発表しています。 
 
「大工育成塾」の立ち上げは直接的な利益にはなりませんが、長期目線で見ると大工の減少は建設業界の衰退に繋がり、我々の死活問題とも言えますので積極的に進めている訳です。一方で2年前より社員大工を一人雇用し、近々もう一人採用することにしています。外部での大工育成と同時に、内部でも大工を抱え育成する方針です。

大工の社員化にも挑戦

――会社で大工を内製化すると、社会保険を負担することに繋がりますから、内製化を避ける会社の方が圧倒的に多いですが。

八田社長

確かに大工に対してはアウトソーシングの方がリスクは避けられます。たとえば建設現場で大工が怪我をした場合、本人の労災保険で処理されます。社内で大工を抱えると労災保険を始めとする社会保険の負担もしなければなりませんから、多くの建設会社では大工の内製化をやりたがりません。ただ、私どもとしては長期的観点で内製化を進めるべきと判断しています。 

木造施工に強み こども園、高齢者施設などで実績

こども園などで木造化の波が押し寄せる

――今、いろいろな事業展開をうかがいましたが、一番注力されている分野はどこですか。 

八田社長

建設業について解説しますと、日本にはスーパーゼネコン、準大手、中堅とさまざまなランクのゼネコン(総合建設業者)があり、地方にも必ず地域ゼネコンが存在し、地域の工事全般を請け負っています。しかし、地域「ゼネコン」は概して建築部門では、RC造、S造、SRC造を得意とするところが多く、木造建築にやや苦手意識を持つ傾向があります。 
 
また、林野庁や国土交通省は戦後、全国的に植林したスギやヒノキの伐採すべき時期が来ており、その木材の使用推奨の法律※を制定し、建築物での木造利用を進めています。それを受け地方自治体の施設や民間建築でも木造で設計することが多くなりました。

※「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(通称:都市(まち)の木造化推進法)」

「都市(まち)の木造化推進法」が追い風に 

脱炭素の流れで建築物施工において木材利用を促進
八田社長

近年、大工は自身の元請け工事の減少や、他社からの工事依頼も含め全体的に工事量が減ってきました。岡崎製材としては大工に公共・民間建築物の木造工事の手伝いをお願いしながら、地域ゼネコンに対しては、材料販売だけでなく、施工を含めた「木造工事」を当社が下請けの立場で請け負うことを提案し受け入れられるようになってきました。今後はここをより伸ばしていこうと考えています。

今や木工事のみで20億円を超える実績で地域ゼネコンと肩を並べる

クリニックでも木造・木質化の流れが進む
八田社長

施工実績としては、幼稚園・保育園やこども園、老人福祉施設も木造化の流れが強くなり、医療クリニックは従来、RC造とSRC造での施工が多かったのですが最近は木造化へのシフトが見られます。分譲・注文住宅の工事は数千万円ですが、公共・民間建築物の施設となると規模も大きくなり、億単位になりますから、木造技術を武器に木造工事分野を強化していきたいと思っています。 

――岡崎製材さまは地域ゼネコンとほぼ同等の実力を備えたのではないでしょうか。 

八田社長

当社は、木工事のみで約20億円の売上がありますから、その分野に限れば地域ゼネコンとほぼ同等な実力を蓄えたといえます。 

地域の工務店と勉強会を重ね、双方で発展する時代へ

工務店と勉強会を重ね、情報もお互いに交換を

――地域工務店のサポートも展開されていますが。 

八田社長

過去30年以上各種の勉強会を重ねています。内容は商品情報や、経営情報などを中心に構成。直近では三河地方のビルダー、工務店、建設会社の方々100人ほどを集めて、「2025年住宅産業大予測」というテーマで、専門紙「新建ハウジング」の三浦祐成社長による研修会を開催しました。

――今後の方針は。

八田社長

弊社では長きにわたり「事業理念」として「最適住環境企業」を掲げて、「地域にお住いの方々にとってより最適な住環境づくりを幅広い提案でお手伝いすること」を「方針」と してまいりました。そして近年では、住宅及び各種施設などの居住空間を広義の「住環境」と捉え、その最適化に向けて事業活動の拡大を図ってきました。 

また、住宅の「省エネ基準適合義務化」など、高性能化に向けて「2025年問題」という業界における大きな動きが出てきていますが、この流れは弊社の事業の方向性を変えることなく、 今まで追求してきたことを更に「将来の方針」として強化していくことになっています。かつて1990年代日本の住宅・住環境分野は世界における後進国レベルであったことが背景となり、前述の「最適住環境企業」が弊社の進むべき方針となっていました。
 
ひとつ具体例をあげます。今年から国が定める建物の高性能義務化(ZEH基準)に先駆けて、昨年、弊社の営業拠点でもある「総合センター」事務所を 建て替えるにあたり、このエリアでは性能評価として最高レベルとなる新オフィス(=オフィス・ラボと呼ぶ)を竣工し、「建築モデル:実験棟」としての活用が始まっています。 

住宅、オフィスでも高齢化住宅でもZEH水準へ 

次世代戦略型オフィス「総合センター|オフィス・ラボ」がオープン
八田社長

国土交通省は2025年4月にZEH(ゼッチ)の義務化をスタートします。そこで岡崎製材としても2024年4月に営業支店「総合センター」の老朽化に伴い、新たにオフィスを建て替えました。日本トップレベルの高性能設計で、昨今エネルギー高に伴い高騰する光熱費を大幅に削減する「超省エネ」を実現し、次世代戦略型オフィス「総合センター|オフィス・ラボ」としてオープン。 
 
同等クラスの高性能オフィスは愛知県内初。全国的にも珍しく、オフィス・ラボを次世代型オフィス空間のモデル棟として活用し、様々なデータ測定・蓄積や社会実験を行いながら、建設業界でのGXや地域の事業者ニーズレベルに合わせて最適なオフィス環境の提案を推進します。そして、光熱費を約50%削減し、高気密・高断熱性能のため、”冬あたたかい、夏すずしい”を実現します。 

またもう一つの方針としては、弊社のDNAともいえる「木材・銘木」分野において、「HAZAI® project」を切り口として、地域や全国の皆様に「木の魅力」を伝えつつ、かつて木が人々の暮らしの様々な場面で使われていた、「木の多様性」を復活させる=「木の復権」を目指した事業活動を推進していくこととしています。

会社概要

社名岡崎製材株式会社
所在地〒444-0842 愛知県岡崎市戸崎元町4番地1
TEL0564-51-0861
代表者八田欣也 
公式HPhttps://www.okazaki-seizai.co.jp/
通販サイト公式https://okazaki-seizai.shop/
公式Facebookhttps://www.facebook.com/OKAZAKISEIZAI/
材木屋のおやじとせがれYouTubehttps://www.youtube.com/ZaimokuyaTV
材木屋のおやじとせがれXhttps://x.com/ZaimokuyaTV
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