以前、株式会社SAの酒井康博社長にインタビューした際、訳アリ不動産を再生する取組みをうかがいました。その時に、記事化にはしませんでしたが、ハラスメントに対し、深い問題意識を持たれ、酒井社長が代表理事をつとめる一般社団法人クレア人財育英協会の社会的意義について語っていただきました。
その際は同協会の「雇用クリーンプランナー」の資格事業と「雇用クリーン企業認定」事業という2つのリソースで、パワハラなき職場環境の構築に尽力されている内容を記事化することを約束しました。
ちょうど、2025年2月14日には、チームクレアの第二弾の書籍『リスクを資産に変える超ハラスメント対策』(チームクレア(著)、酒井康博(著)、大田勇希(著), 小野純(著)、Laule’a出版発行)が発行されましたが、インタビューしたタイミングはちょうど執筆を終えたばかり。その機会を得まして、一般社団法人クレア人財育英協会の代表理事の酒井康博氏に話をうかがいました。

一般社団法人クレア人財育英協会
代表理事 酒井康博氏
会社の存続にもかかわり、リスクの高いハラスメント

――昭和と令和ではハラスメントのギャップが大変大きいと考えています。まずはこの点から。

昭和と令和では価値観が大きく変化し、それは誰にも止められません。昭和世代の方々が令和の時代にご自身の価値観を押し通そうとすると、会社では大きな軋轢が生まれます。その中の一部ではハラスメントも含まれます。例えば、大きな声を荒げて部下を𠮟りつけることは時と場合によってはハラスメントとして問題視されます。もし、令和時代でも引き続き、社会人として生き延びたいとお考えであれば、価値観を昭和から令和にアップデートすることが肝要です。
もし、昭和時代の価値観がそのまま現存する会社があったらどうでしょうか。今はネットの時代ですから、ハラスメントが発生すれば会社の大小にかかわらず伝播する時代です。名前は申しませんが、昨今ある企業がハラスメントと疑える事象があり、会社の存続にかかわるほどの大問題になっています。私どもでは、『ハラスメントが会社を潰す』(チームクレア著、財界研究所発行)をという本をまとめましたが、この本に込められたメッセージは決して大げさな文言ではないのです。
改めてハラスメントを説明すると、「相手の属性や人格に関する言動などによって相手に不利益や不快感を与え、尊厳を傷つけること」をいいます。ですから、「なんでもハラスメントだ」と主張とは一線を画しています。
――そういう意味で、ハラスメントは大変リスクが大きいですね。



これは今、令和の時代を生きている皆さんであればご理解いただけると思いますが、一つの不正、行き過ぎたハラスメントなどのニュースがあると、ネットでは不買運動が起こり、しかもなかなかそれが収束しない点に大きな特徴があります。これが昭和時代であれば、「いやよねぇ」と数日間、言い合えばそれで収束して、その後何事もなく終わっていたと思います。
しかし、昭和と令和では大きな違いはSNSです。いくら遠方でも不満を言い合い、忘れ去られることがなかなかなくなっています。これまで盤石で決して揺るがない企業であっても、大きなミス不正があれば、指弾され、会社の根幹が大きく揺るぎます。これまでは商品やサービスがその対象でしたがこれからはハラスメントも指弾される材料です。
今、ちょうどこのインタビューに応じているのは2025年1月末ですが、昨今の報道で実感されている方も多いのではないでしょうか。社内でのパワハラをいうに及ばす、セクハラ、マタハラなどハラスメントは大きな経営上のリスクになります。それはどの企業でも起こりえますので、会社も社員も丁寧に接することが会社を守ることに繋がります。
ただ、人によってハラスメントの受け止め方や程度も異なります。全国一律の考え方をつくるのは難しいのかもしれませんが、企業ごとに取組んでいくことが肝要です。ただ、一方、その人が憎くて行うハラスメントよりも成長を促すための激励もあり、この点は根深い問題のため、スタンダードな資格でパワハラについて学ぶことがベストです。
社会はSNSの発展で簡単に許さなくなった時代に


――『ハラスメントが会社を潰す』では、SBIホールディングスの代表取締役会長兼社長が推薦の言葉を寄せていますね。



「私たち企業人は、『人財』こそが最大の資産。人の消費だけを続けている企業は永続できない」とありがたいお言葉を賜りました。北尾様も企業活動を続けている中で厳しい局面もあったと想像しますが、ハラスメントに対して厳しい指摘をしていただいたことは、嬉しく思います。ただし何も厳しいことをいわない企業はハラスメントがなくホワイト企業かといえばそうでもなく、その線引きが難しいですね。
――コストパフォーマンス的にもハラスメントは悪いですね。



令和の時代では、会社、アイドル、マスメディアなどに対しては、不祥事や不正を起こした際には簡単に許してもらえません。たとえば、ある大物芸能人が不祥事を起こした際、芸能界から引退する憂き目になるほどの影響がありました。しかも対応を、少しでも間違えると大事になります。一回の誤りでも芸能界から退場させられるほどの厳しい時代です。ですから昭和の時代と違い、令和では会社も人もなるべく丁寧に生きることが求められているのです。
人間は役職、資産や年齢で優位性を図るのですが、そのことを笠に着て優位性を示すことがハラスメントです。そこで役職が上だから部下に無理を強いてもいい、バカにしてもいい、偉そうにしてもいいなどの思考回路は本能的なものですから、これは自分を律しなければ誰でも起こりうることです。現代社会ではこのような態度は好ましくないと社会的にも周知されておりますから、ハラスメントをすれば会社にも、家族にも多大な迷惑が掛かります。
ハラスメントが公になれば、会社では新入社員が入社してこなくなり、中途入社も避ける人材も増え、取引先も取引を停止する動きもあるでしょう。それでもハラスメントに歯止めをかけられないのは、決して賢明ではありません。確かにハラスメントは優位性や快楽をもたらします。だからこそハラスメントを撲滅するのは難しいのですが、会社でのステータス、利益あるいは会社の将来を捨て去ることは愚かな行為といえます。
ハラスメント撲滅ではトップの意識が重要


――ハラスメント防止ではトップの意識が重要ですね。



従来の会社では許容されてきたものが社会は許されない状況が続いています。ハラスメントが表ざたになり、社会から指弾された際、今、申し上げたように会社の損失は多大なものになります。ただ会社は役員、従業員がバラバラで発言しても会社は大きく変化しません。会社全体での変化はやはり社長の発するメッセージによります。
例えば、ハラスメントが当たり前のようにはびこっている会社があるとしましょう。社長のツルの一声で「これからハラスメントは禁止する。健全な職場環境を守るために、ハラスメント撲滅することを宣言する。また、ハラスメントについて相談するための専門の相談室も開設する」と語った場合、会社は大きく変わります。もちろん、社内文化を一気に変えようとすると、士気が下がる可能性があるため、撲滅宣言のアプローチは慎重であるべきですが、社長の役割として、まずはハラスメント撲滅宣言を意思決定することが肝要です。
――次はどのようなアクションをすべきですか。



社長のハラスメント撲滅宣言の号令後、それぞれの役割、ポジションで進むべき道を共有し、従業員津々浦々まで、「このようなハラスメントの行動や発言はやめるべき」と意思統一しなくてはいけません。しかし、従業員が多ければ意思統一を完全に図ることは難しいです。完全に防止する組織は成りえない前提に立ちつつも、建前としては完全な組織を目指さなければなりません。
そこで対策と予防により、ハラスメントトラブルの総量を減らし、トラブルが発生した時の準備を行うことが社長の役割になります。


――酒井代表理事は不動産業界に身を置き、ハラスメントを受けたことも想像しています。そういう中で、株式会社SAを立ち上げられ、一風変わった組織形態とうかがっています。



2018年に株式会社SAを設立し、「ギルド」のような組織形態を採用しています。それぞれ自信のある人材が会社に集まり、会社でストックした案件を自身の腕でさばいていきます。会社と彼らとの関係はイーブンです。
彼らはSAのために働くのではなく、自身のために働き、それが最終的にSAの成長に寄与することとなります。このような組織形態でも億単位の収入をたたき出す猛者もいて才覚次第で稼ぎ出すことも可能で、一方で稼いだ金額は会社にも還元されていくのです。
不動産業界は、確かに「ブラックな労働環境の闇」は存在します。SAではこの闇を分離し、「やり甲斐」の結晶を集結しています。
●【東京・SA】スピーディーに共有持分や再建築不可物件の解決で、悩める顧客から多くの支持を集める


新資格「雇用クリーンプランナー」を創設


――クレア人財育英協会ではどのような活動を。



働きやすい環境を整えることは、従業員一人ひとりのモチベーションを高め、パフォーマンスを向上させる大きなカギです。それは、企業にとっても売上を伸ばすための最短ルートであり、組織全体の成果にも直結します。そこで一般社団法人クレア人財育英協会を設立し、パワハラ対策のスペシャリストの資格である「雇用クリーンプランナー」を創設しました。
これはハラスメントや労働トラブルを未然に防ぎ、職場環境を根本から改善する日本初の資格。労働法やハラスメントリテラシーを学び、職場の空気を変える実践スキルを身につけることで、就職や転職、スキルアップにも直結します。
「職場に安心と未来を、恐怖と沈黙のない職場」・・・私はこれを単に理想に留まらず、実現すべき課題だと確信しています。
活動内容は、「雇用クリーンプランナー」の普及促進であり、ハラスメントは悪いことは理解していてこれを勉強するなどの機会も中々ありませんので研修のほか、SNSで啓発活動を進めています。
――「雇用クリーンプランナー」の資格取得の意義は。



ハラスメント防止は数字に表れる内容ではありませんので、この資格を取得すれば営業的な利益を確保できるものではありません。しかしハラスメントが表ざたになると、会社にとっては一気にマイナスになるため、ハラスメント防止に投資をすると経営上、重要な意義を持ちます。今、資格取得者は約600名弱です。
――資格取得者の属性は。



意外と年齢的には40代以上の方が多いです。私どもは、ハラスメントの問題意識を持っている人事担当者が多いと想定していました。もちろん、今申し上げた方は半分を占めていましたが、自己啓発や自分にもこのようなハラスメントは起こりうるため学びたいという方も一定数おられました。また、キャリアコンサルティングなどの資格を元々保有して、さらにハラスメント分野も専門的に学びたいというダブルライセンスの方やキャリアアップのために資格取得をされる方が多い印象もございます。これから若い方にも資格取得を願っています。
講座内容は20時間のオンライン講義から構成


――「雇用クリーンプランナー」の講座内容は。



20時間のオンラインの講義を受けていただきます。他団体の講座はハラスメントの講座だけですが、私どもはハラスメントと労働トラブルを網羅した講座になっている点が大きな差別化です。この講座が実現できている理由は、社会保険労務士の小野純先生が担当されていることも大きい。ハラスメントは残業、有給休暇や退職時と紐づいて起こりやすい。その部分とハラスメントの法律と体系的に学びます。取得された方はご自身の実業や新しい学びを活用されています。
また、人間は忘れる生き物ですから、継続学習の意味でもSNSで繰り返し、動画にしています。また、資格制度にしたことも大きなポイントで、自分の名刺に「雇用クリーンプランナー」を記入しますと、忘れずにいられます。
――「雇用クリーン企業認定」事業とは。



「雇用クリーンプランナー」を取得した方の在籍企業に付与する認定事業です。一人だとブロンズ、数人であればシルバーで今後はランク別に応じて企業認定をしっかりとしていきたいのです。現在はほぼゴールド企業を、一部ブロンズ企業を認定しています。
新刊『リスクを資産に変える超ハラスメント対策』発刊
――この度、再度、『リスクを資産に変える超ハラスメント対策』(チームクレア(著)、酒井康博(著)、大田勇希(著), 小野純(著)、Laule’a出版発行)という本を出されましたが大きなポイントは。



一冊目の本はハラスメントの持つ怖さを訴求しました。2022年4月から、パワハラ防止措置が全企業に義務化され、法的にも経営的にも、ハラスメントに対して明確な施策が必要です。二冊目は、リスクはやり方によっては経営資産になることを強調しました。
相談窓口の設置義務など、いち早く対策を施せば、企業の体質改善になり、他社とのブランディングや差別化になります。ハラスメント対策を経営資産に変えるには工夫が必要で、それこそが「雇用クリーンプランナー」の資格取得でハラスメント対策を経営資産に変えていく手法の提案です。「雇用クリーンプランナー」により莫大な経営資産を生み出すことになるでしょう。
今後は会社・団体のみならずスポーツの世界や学校への普及を続けていきたいと思います。


団体概要
団体名 | 一般社団法人クレア人財育英協会 |
住所 | 〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町3-12 紀尾井町ビル6F(運営会社 株式会社SA) |
TEL | 03-6380-8095 |
公式HP | https://caa.or.jp/ |
公式X | https://x.com/chreajinzai |
公式YouTube | https://www.youtube.com/channel/UCwuks7u67sOv_lh2ufRXkAA |
コメント