稲沢市は愛知県の尾張地方に位置する市で、名古屋市へのアクセスが良好でベッドタウンとして知られています。古くは旧尾張国の国府※が置かれ、政治・文化の中心地として栄えました。
※国府・・・国司が政務を行う施設(国庁)があった都市を指す。国府は各国の政治、司法、軍事、 宗教の中心地。
肥沃な土壌と温暖な気候を活かし、植木や苗木の産地として発展。特に市内の祖父江ぎんなんは全国的規模でブランド化しています。
歴史と文化を感じるスポットでは、尾張大國霊神社(国府宮)。古代からの名門氏族・尾張氏の祖先が開拓したと伝えられています。特に「国府宮はだか祭」は、1200年以上の歴史を持つ勇壮な祭りとして知られています。
今回、稲沢市観光協会主幹の岩橋 洋宗氏に稲沢市の観光やイベントなどについてお話をうかがいました。

稲沢市観光協会
主幹 岩橋 洋宗氏
名古屋のベッドタウンである稲沢市

――稲沢市の概要と魅力について
岩橋 洋宗氏(以下、岩橋氏)20年前の2005年4月1日に旧稲沢市、祖父江(そぶえ)町、平和町の 1市・2町が合併し、新たに稲沢市が誕生しました。人口は現在約13万人です。
愛知県の尾張地方に位置する市で名古屋に向けた鉄道の利便性も高いです。名古屋鉄道では国府宮駅、JR東海では稲沢駅があり、いずれも15分以内で名古屋駅に到着します。そのため、 稲沢市在住者で名古屋駅周辺に通勤される方も多いです。
「植木のまち」として全国的に知られており、古くから植木の四大生産地の一つとして栄えてきました。お祭りでは、稲沢市で開催される尾張大國霊神社の「国府宮はだか祭」は1200年以上の歴 史を持つ伝統的なお祭りで、「天下の奇祭」とも呼ばれています。また、祖父江町地区では、ぎん なんの栽培が盛んです。
スポーツも盛んな地域で、日本のバレーボール・SVリーグのウルフドッグス名古屋やハンドボー ル・リーグHの豊田合成ブルーファルコン名古屋が本拠地を置いています。最大3,500人を収容で きるアリーナ「エントリオ」があり、ここを本拠地として活動しています。
特に豊田合成ブルーファルコン名古屋が2020年から2025年に至るまで5連覇中です。ウルフドッグス名古屋も強豪チームで、2022年と2023年ではリーグ優勝しています。
ほか季節によっては花や樹木などに合わせたイベントも開催している街です。
日本三大はだか祭りの一つ「国府宮はだか祭」


――次に観光スポットは。



季節的には、日本三大はだか祭の一つ「国府宮はだか祭」は、毎年旧暦の正月13日に 行われるお祭りで、正式名称は「儺追神事(なおいしんじ)」とされ、2026年の開催日は3月1日で す。





このお祭りは1200年以上の歴史を持つ、愛知県の無形民俗文化財です。数千人の裸男たちが 厄年の男性を中心に集まり、厄災を背負った「神男(しんおとこ)」に触れることで厄落としとなる神事です。
その「神男」に向けて皆さん集まってふんどしと白足袋を身につけた数千人の裸男たちが、「ワッショイ」という掛け声とともに激しくもみ合います。
国府宮は、尾張地方の総鎮守神、農商業守護神、厄除神として広く信仰されております。本殿は 流造、拝殿は切妻造、全体の様式(建物の配置)は尾張式といわれ、本殿・渡殿・祭文殿・東西の 廻廊・拝殿・楼門と建ち並んでおります。





うち江戸時代初期の拝殿や室町時代初期の楼門は、国の重要文化財に指定されています。また、本殿に接する形で磐境(いわくら)と呼ばれる5個の大きな自然石が円形に立ち並んでおりま す。





これは、今日のように社殿を建てて神様をお祀りする以前の最も古い原始的な祭場で、国府宮がこの地に古くより創始されていたことを物語っており、かなり古い時代からの信仰を集めた場所の名残とされています。
晩秋の祖父江町はイチョウにより黄金色に輝く





次に祖父江町は、晩秋の季節に入ると約1万1,000本ものイチョウが色づき、まち全体が黄金色 に染まります。毎年11月下旬、年によっては12月初旬まで、「そぶえイチョウ黄葉まつり」を開催します。
まつり期間中は、イチョウのトンネル散策のほか、ステージイベントやイチョウ写生大会、写真コンテスト、特産品の販売などが行われ、翡翠(ひすい)色に輝くぎんなんも味わうことができます。
夜間には祖父江ぎんなんパークでのライトアップを実施し、ライトに照らされて輝きを増したイチョウの木が幻想的な姿を見せてくれます。祐専寺の境内では、稲沢市指定天然記念物で樹齢300年以上であるイチョウの大樹が存在感を放ち、来場者の目を楽しませています。









また、善光寺東海別院があり、別院の本堂は信州善光寺の約3分の2の大きさで、善光寺特有の撞木造り(内陣と外陣の棟が「T」字型になる構造)。本堂内には極楽浄土を表す「極楽戒壇めぐり」があり、参拝者が多く訪れます。
市が一押しの「稲沢カレー」


――おすすめのグルメについては。



稲沢市・稲沢市観光協会は、「稲沢カレー」をご当地グルメとしてイチオシしています!!
2022年6月に「食」をテーマに地域活性化プロジェクトがスタートしました。このプロジェクトには、 市民や学生も参加し、約1年間にわたって議論が重ねられ、その結果、2023年にテーマが「カ レー」に決定し、「カレー」と「稲沢らしさ」を融合させた新たなご当地グルメ「稲沢カレー」が誕生し ました。
日本で初めて本格的なルウタイプの即席カレーを製造・販売した株式会社オリエンタルの工場と営業本部が稲沢市にあり、また稲沢市のシンボルであるイチョウの黄金色がカレーを連想させる点でご当地グルメとしてのカレーが選定されました。
「稲沢カレー」は、以下のルールを満たす料理ですが、その定義は幅広いとも言えます。
・カレーのスパイスを使った料理であること。
・「稲沢らしさ」や「稲沢ならでは」を表現していること
・お店の個性やこだわりを加えること
各店舗が創意工夫を凝らし、カレーライスはもちろん、カレーパン、洋菓子、和菓子などもあり、稲沢市マスコットキャラクター・いなッピーをテーマにした商品も登場しています。現在は43店舗で提供しています。
2023年から継続的にカレーフェスティバルを開催





そこで2023年から「稲沢カレーフェスティバル」を開催しています。誘客への課題解決とコロナ禍 で疲弊した飲食店や地域経済を元気づけたい想いから、幅広く参入できるカレーをテーマに、市民・飲食店・農家・企業らと連携し、市制65周年記念のイベントとして発足しました。
2025年は、「カレーフェス2025」を11月2日に開催しました。市内の28店舗が参加し、「カレー×稲 沢らしさ」をテーマにした和食、イタリアン、カフェ、パン屋、居酒屋など、様々なジャンルのお店が 出店し、参加者は多様なカレーを楽しまれました。
今回で3回目ですが、会を追うごとに参加店舗数と参加人数が増えており、現在は地元中心の フェスですが、遠方からの方もお越しいただいていることもあり、これからも伸びしろのあるイベン トといえます。


100 種類200本の個性豊かな梅が咲く「梅まつり」


――他のイベントはどのようなものがありますか。



主に花にまつわるイベントをいくつか行います。稲沢市は、毎年「いなざわ梅まつり」を開催し、愛知県植木センターに植えられた100種類200本以上の梅が特徴で、全国的にも珍しい梅 の見本園として知られています。例年3月上旬に開催します。
愛知県植木センターの梅品種園には、個性豊かな梅が敷地に咲き誇り、開花時期には多数の見学者で賑わいます。まつり期間中は植木・苗木や特産品、ご当地グルメ「稲沢カレー」などの飲食物の販売をはじめ、市公式マスコットキャラクター「いなッピー」のステージ、俳句大会や写真コン テスト、ウォーキングなど楽しいイベントが盛りだくさんです。
総延長2.8km桜並木の平和地区の「桜ネックレス」





平和地区の「桜ネックレス」は、へいわこども園から日光川左岸堤、須ヶ谷川両岸、平和中央公園 へと続く総延長2.8kmの桜並木です。かつての「さくらのまち 平和」を復活させたいという人々の思いから、1986年に旧平和町の総合計画の主要事業として構想が位置づけられました。
全体で約60種類、およそ1,400本もの里桜が植えられており、3月中旬から4月下旬までの長い期間、美しい桜を楽しむことができます。


4月には植木イベントを開催。植木生産者が安価で提供





4月にはもう一つイベントがあります。4月下旬には植木イベント「いなざわ植木まつり~グリーン フェスティバル~」を毎年開催しています。先ほど、稲沢市は植木の四大生産地と申しましたが、このお祭りでは市内の植木生産者が直接植木や苗木を安価で提供することで、人々の緑への関心を高め、緑豊かな生活や地域づくりを目指しています。場所は国府宮参道と境内です。
あじさい寺の別名を持つ性海寺





6月に入ると、性海寺の境内地内に整備した「大塚性海寺歴史公園」のあじさいが咲き誇り、「稲沢あじさいまつり」が開催されます。公園には、「紅」「花火」「城ヶ崎」「甘茶」などの日本のアジサイと「アナベル」 「八重咲カシワバアジサイ」などの西洋のアジサイが植栽されています。シーズンには約90種を数えるアジサイが園内を彩ります。





性海寺は、空海によって創建されたと伝えられています。国指定重要文化財として本堂や須弥壇擬宝珠などがあります。


夏まつりでは、尾張最大級のナイアガラ花火が必見





このほか、夏では風物詩となる「稲沢夏まつり」を開催。毎年8月にサリオパーク祖父江が会場 で、打ち上げ花火やナイアガラ花火の他、屋台やステージイベントも楽しめます。
特に、市民の力で実現する「尾張最大級のナイアガラ花火市民の力で173.0 (イナザワ)m」は必見です。毎年、約5万人の方が訪れます。





10月には稲沢まつりを国府宮参道で開催。模擬店や、稲沢特産品・植木などの大バザールのほか、名古屋文理大学文化フォーラムでの芸術祭など多彩なイベントを実施します。





こうして見ますと稲沢市はイベントが多く、そのイベントで人が集客できる街と思います。
東京の高級料亭でも提供される祖父江ぎんなん


――次に稲沢市の名産品や温泉・宿泊施設はいかがでしょうか。



冒頭にも話しましたが、祖父江町山崎地区で栽培されている祖父江ぎんなんは、全国的に有名なブランドで、東京の高級料亭でも提供されています。祖父江町地域は江戸時代後期からぎんなんの栽培が盛んで、「ぎんなんの里」として有名です。
大粒で食べ応えがあり、もっちりとした食感を楽しめ、上品な風味とほのかな苦味が食欲をそそります。品種は、主に「久寿(きゅうじゅ)」、「藤九郎(とうくろう)」、「栄神(えいしん)」、「金兵衛(きん べえ)」の4種類が代表的です。



また、きくらげには国産と純国産がございます。最初に菌床を中国などから輸入し、日本で育てるのが国産で、菌床の段階から国内で育成するのが純国産です。稲沢市には、純国産きくらげの栽培・販売を行う「株式会社きくらげファーム稲沢」という会社があります。
きくらげにとって重要な水は、マイナスイオン水を利用しています。人の手で一つひとつ丁寧に収穫しています。いろいろな料理方法がありますが、きくらげをお漬物にされる方もいます。
株式会社きくらげファーム稲沢公式Instagram
https://www.instagram.com/kikuragefarm/





地酒では内藤醸造が、祖父江町のイチョウの花から分離した酵母によって醸された純米酒「プリンセスギンコ」なども造っています。主な銘柄は、「木曽三川」「賞己・七醸焼」などです。



また、稲沢市もふるさと納税を実施しており、もしご関心がありましたら、是非、各サイトでご覧いただければと思います。


さとふる
https://www.satofull.jp/products/list.php?s3=1246&cnt=60&p=1


天然温泉施設 祖父江ふれあいの郷





天然温泉の施設では、「祖父江ふれあいの郷」という日帰り入浴施設があります。地域の方々に親しまれ、比較的リーズナブルな料金で利用できます。
天然温泉が楽しめる施設で、内風呂と露天風呂があります。泉質はナトリウム・カルシウム塩化物泉で、神経痛、関節痛、疲労回復などに良いとされています。
大きな宿泊施設がないというのは稲沢市の観光での課題ですが、比較的こぢんまりとした宿泊施設では、「和陽館」があり、ビジネスでも観光でも便利なホテルで名古屋や岐阜方面にもアクセスが良好で、疲れた体を癒せるくつろぎの空間が提供されています。


織田信長生誕地は、稲沢市だった!!


――余談で恐縮ですが稲沢市はあの織田信長の生誕地であったのですね。



織田信長は、現在の稲沢市で誕生したことが定説になっています。1534年(天文3年)に 稲沢市の南と隣の愛西市にまたがる「勝幡城」(しょばたじょう)にて、誕生しました。
織田氏にはいくつか分家があり、中でも信長を輩出した織田弾正忠家が最も有名です。弾正忠家 は、勝幡城を拠点に置き、信長の父・信秀は1533年(天文2年)に京都の公家の山科言継を招き、言継は城の規模と出来栄えを自身の日記『言継卿記』に残しています。
実は以前の信長生誕地は、那古野城(現在の名古屋市)が有力でしたが、信長生誕時の1534年には那古野城を支配していないことがほぼ明らかになったため、勝幡城生誕説が定説化したのです。
これは明確ではありませんが、信長は3~4歳までは勝幡城にいたとされ周辺の寺社仏閣には信 長にまつわる伝説が残っています。
中でも性海寺の本堂にある宝塔は、中世の作とされ、安土城の宝塔のモデルとなったと伝わっています。



また、今から90年前に稲沢市立の三宅小学校の校歌が制定されましたが、その中に「われら生まれしこのさとは英雄信長 発祥地」との一節がございます。
定説になる以前から稲沢の人々は言い伝えなどで信長が生まれた街であることを知っていたのだ と思います。


模型で復元された勝幡城で信長に思いを馳せる





この10年間で『言継卿記』などの再検討が進み、郷土史家の石田 泰弘先生の研究により、「信長 は勝幡城で生まれたのが妥当」としました。この後に勝幡城生誕説を補強する論文が次々と発表 され、定説化に至りました。
今、勝幡城跡には碑を建立しているのみですがそれでも信長好きな方が多いですから、訪問され る方も多いです。勝幡城跡地は三宅川と日光川が合流する地域で、流路は江戸時代の改修工事 によって大きく変化しており、城跡の遺構はほぼ残っておらず石碑を建立しているのみです。
勝幡城跡近くのCafe&居酒屋 Taiyouや稲沢市観光協会でなどで「勝幡城跡」御城印を一枚300 円で販売しています。
「いなざわ観光まちづくりラボ」の活躍


――観光による町おこしはいかがですか。



イベントによりますが、稲沢市や稲沢商工会議所、ボランティアの多くの皆さんと協力して 進めていますが、多くの人がピンポイントでいらっしゃるのは祖父江町の秋のイチョウが一番人気です。
今、ちょうど町おこしと観光に情熱を抱かれている組織「いなざわ観光まちづくりラボ」がございま す。
稲沢市観光協会をファシリテーターとし、市民、関係機関・団体や行政など、多様な主体がいなざわ観光まちづくりラボを媒介として有機的につながり、それぞれの役割やノウハウを活用し合うことで、稲沢市ならではの着地型観光メニューの創出や新たな観光・交流事業の推進、魅力の再発 掘・再構築を実施していきます。





いなざわ観光まちづくりラボが主体となり、「ヤバ稲オンパク2025」を稲沢市内で2025年8月1日 から9月30日までの2ヶ月間にわたり体験型博覧会として開催しました。21の体験プログラムを用意し、食、交流、自然、まち巡り、芸能、歴史など、稲沢市ならではの魅力が詰まったイベントとし て企画しました。これも一つの町おこしの事例です。
特に信長関連では、郷土史家の石田 泰弘先生が勝幡城跡周辺をご一緒に歩いて解説をしてい ただいた他、JR貨物稲沢駅の内部を見学するツアーも人気でした。普段は立ち入ることのできない「貨物駅」の魅力を存分に体感できる特別ツアーを開催しました。





それぞれの道に詳しい方が企画立案し、実施されこの2ヶ月で350名以上の集客が実現しました。 普通の町おこしとの違いは人の力をお借りている点にあります。


――最後に貴協会の今後の方向性を。



これからいろんなことを試してみたいと思います。ヤバ稲オンパク2025は8月~9月の限定での開催でしたが、今後春先での開催の検討をします。次に愛知県が主体となり、2026年にア ジア競技大会を開催しますが、稲沢市としてもアジアの方を受け入れる計画があります。
アジアの方向けにバスツアーを2026年2月に企画をしており、少しでも外国人の方に稲沢市に関心をお寄せいただけるようにしていきたいです。
稲沢市には残念ながらこれが大きな目玉というものが乏しいですから、ボランティアやラボの方々 のお力をお借りしたいです。
特に「ヤバ稲オンパク」では人とのふれあいの中で楽しんでいただけることができると思います。
私は2025年3月まで旅行業界に勤務し、その後、稲沢市観光協会に勤務しています。そこで 日々、ボランティアやラボの皆さんが稲沢市の誇れる場所をアピールしていると感じています。やはり、人を介し、PRしている点が一つの観光のあり方を形成していると最近は考えています。


会社概要
| 名称 | 稲沢市観光協会 |
| 本社所在地 | 愛知県稲沢市朝府町15-12 |
| 公式HP | https://www.inazawa-kankou.jp/ |
| 公式SNS | https://www.instagram.com/inakankou1730/ |







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