長崎県北部に位置する佐世保市は、美しい海や港町の風景が魅力です。リアス海岸と208の島々で構成されている西海国立公園 「九十九島(くじゅうくしま)」や国内最大級のテーマパーク「ハウステンボス」など九州でも有数な観光都市として有名です。
明治期以降、造船業と軍港の街として発展してきました。
今回は、公益財団法人佐世保観光コンベンション協会の永野 虹遥さんに佐世保市とその周辺の観光の魅力について話をうかがいました。

公益財団法人佐世保観光コンベンション協会
永野 虹遥さん
魅力あふれる街「佐世保市」

――佐世保市とその周辺の歴史と魅力について。

佐世保市は、ハウステンボスをはじめ、旧石器時代から土器文化(縄文時代)への過渡期の文化層が認められた特別史跡指定の「福井洞窟」や、日本遺産にも認定を受けた江戸時代から続く400有余年の歴史を誇る伝統的工芸品「三川内焼」があり、明治時代には海軍鎮守府が置かれ、軍港・造船のまちとして発展・成長し、戦後は、米海軍の基地がおかれるなど、奥深い歴史と国際色豊かな風土、さまざまな文化が存在する街です。
また、西海国立公園に指定されている「九十九島(くじゅうくしま)」や日本最大級のテーマパークである「ハウステンボス」に代表される観光都市でもあります。
日本本土最西端に広がる「九十九島」は、複雑に入り組んだリアス海岸と大小208の島々からなる風光明媚な景勝地です。「九十九」とは“数えきれないほどたくさん”のという意味があります。佐世保市の九十九島、平戸、五島列島を含む「西海国立公園」は2025年3月16日で国立公園指定70周年を迎えました。市内8ヶ所には「九十九島八景」と呼ばれる展望台があり、それぞれの特色を活かした九十九島の絶景を見ることができます。
「海風の国」とのキャッチフレーズに込められた意味


――佐世保観光コンベンション協会には、「海風の国」とのキャッチフレーズがありますが。



観光地が広域的に連携した「観光圏」の整備を行うことで、国内外の観光客が2泊3日以上滞在できるエリアの形成を目指し、国際競争力の高い魅力ある観光地づくりを推進し、地域の幅広い産業の活性化や、交流人口の拡大による地域の発展を図ることを目的とした観光圏整備法に基づき、佐世保市と小値賀町の1市1町で、整備実施計画を提出し、2013(平成25)年に「海風の国佐世保・小値賀観光圏」として認定されました。
観光圏とは、自然・歴史・文化等において密接な関係のある観光地を一体とした区域であって、区域内の関係者が連携し、地域の幅広い観光資源を活用して、観光客が滞在・周遊できる魅力ある観光地域づくりを促進するものです。





佐世保市と小値賀町が形成する「海風の国」には「海」を舞台として様々な自然、歴史、文化、食、人、物、技術、信仰が世界と交流しながら、島々、浦々に伝わり、根付き、そして、それぞれの地域で独自の発展を遂げ、現在、多様な魅力となって各地域で輝きをもって今に伝わっています。
また、小値賀町では、海を生活の場とする人々の暮らし、鯨漁、鮑漁をはじめとする漁業の歴史、食文化が現代の暮らしの場に息づいている離島であり、島の一部の範囲は、国の重要文化的景観に選ばれています。野崎島に残された旧野首教会は、長崎外海地方から海を渡り、もたらされたキリシタン信仰の歴史を今に伝えています。
感動を生む眺望「九十九島」


――映える観光スポットのご紹介について



「九十九島観光公園」「九十九島遊覧船 パールクィーン」「ハウステンボス」を紹介いたします。





2021年にオープンした「九十九島観光公園」の約4.7haの広大な芝生広場の丘「眺望の丘」からは九十九島を大パノラマを見渡すことができ、これまでにない景観を体感することができます。可愛い「九十九島」の文字のモニュメントはフォトスポット。また、公園内は階段とスロープもあり、バリアフリーも完備しています。





西海国立公園九十九島の観光拠点となる九十九島パールシーリゾートで人気なのが九十九島を巡る約50分の遊覧船「パールクィーン」です。8月~10月には日没の時間に合わせて運航する期間限定の「サンセットクルーズ」もあります。海の女王をイメージした、その名にふさわしい優雅な白い船体は、木目調のインテリアと人に優しいバリアフリー対応。快適な九十九島遊覧を満喫してください。





長崎県のテーマパークリゾート「ハウステンボス」は、ヨーロッパの街並みを再現した美しい景観と、四季折々の花や光の演出で人気を集めています。
また、今年6月にオープンした世界唯一の新エリア「ミッフィー・ワンダースクエア」や、今年9月にオープン予定の没入型ライドアトラクション「エアクルーズ・ザ・ライド」など、近年では新エリアも続々と登場。
季節ごとのイベントやショーも充実し、訪れるたびに新しい魅力と出会えるハウステンボス。今後もさらなる進化に注目が集まります。
九十九島の海域で獲れた海の幸


――おススメのグルメスポットも教えてください。



「長崎県は魚種の豊富さ日本一!」ということで、佐世保を「魚が美味しい街」として盛り上げるため、「九十九島の海域で獲れたひらまさ」にスポットをあてた取組みを推進しています。





「ひらまさ」は、ぶりやかんぱちに比べ、時間経過による血合いの変色が少なくコリコリとした食感が特徴の旨味の強いお魚です。そんなひらまさの中でも、西海国立公園九十九島の恵まれた環境で養殖されているひらまさは、「九十九島ひらまさ」としてブランド化されています。





佐世保では、普段から「ひらす」として親しまれ、ハレの日には必ずと言っていいほど食卓に上ります。また、各店が趣向をこらした絶品のひらまさ料理を佐世保市内20を超える飲食店で提供しています。





佐世保・九十九島の冬のグルメの代表格といえば「九十九島かき」。208の島々からなる九十九島の、入り組んだ海岸線に連なる洋上の島々から送られる養分をたっぷりと吸収した「九十九島かき」は、やや小さめの殻いっぱいに詰まった身が特徴。食感もぷりっぷりで味が濃厚です!





旬の10月~3月には、海沿いのカキ焼き小屋でも「九十九島かき」が食べられます。自分で焼いて食べると美味しさもひとしお。
うまみたっぷりの九十九島かきをぜひ、ご賞味下さい。
水掛け地蔵まつりなど各種イベント


――イベントのご紹介を。



主なイベントを紹介いたします。
「江迎千灯籠まつり」 (えむかえせんとうろうまつり)は、毎年8月23日と24日に行われるこの祭りは、約500年続く伝統行事。見どころは、約3,500個の灯籠で飾られた高さ約25mのタワーで、今や日本一の高い灯籠タワーとしても有名です。
もうひとつの見どころは「水掛け地蔵まつり」です。子どもたちが神輿にのせた木彫りのお地蔵様に水を掛け、そのあと神輿を担いで町を練り歩く。そんな子供たちに、こんどは町の人がひしゃくやタライで水を掛け無病息災を祈願します。夕刻になると街中に約1万個近くの灯籠が灯され、一瞬にして光の世界に変わる光景はなんとも幻想的です。お祭りの終盤には2日間で計2,000発の花火が打ち上げられます。





「YOSAKOIさせぼ祭り」は、九州では最も大きなよさこい祭りの一つです。メイン会場の名切お祭り広場が新たにリニューアルされた「佐世保中央公園」をはじめ、市街地中心・複数会場で演舞が楽しめます。老若男女問わず、音楽に合わせて鳴子をならしながら力強く踊る姿は、圧巻です。





「早岐茶市」(はいきちゃいち)のはじまりは、450年あまり前の安土桃山時代。交通の要衝であった早岐エリアでは、漁師や農民らが山海の幸を持ち寄って物々交換したのをきっかけに、「市」がたつようになりました。最盛期の江戸末期から明治の中頃にかけては600隻もの船が集結し、九州の茶の相場は早岐で決まるとまでいわれました。400年を超える歴史を現代に引き継ぎ、今も活気あふれる早岐茶市では、地元の海産物やグルメなど100店以上が出店します。





「三川内焼窯元はまぜん祭り」での「はまぜん」とは窯で焼成する際の収縮による歪みを防ぐ為に器と同じ素材で作られた円形の土台です。上質の三川内焼(みかわちやき)を生み出すなかで無くてはならない存在ですが一度の使用で役目を終えます。「はまぜん祭り」では、その大切な道具「はまぜん」と先達に深く感謝の意を表し、毎年5月1日の陶祖神社での祭礼にて陶工がろくろを廻し「はまぜん」の奉納も行います。
三川内皿山を舞台に風情のある町並みを味わいながら、窯元巡りを楽しめ、絵付け体験など各窯元が趣向を凝らしたイベントが行われます。なかでも1日に2回行われる、みかわち焼オークションは、窯元自慢の逸品がお得な値段で手に入るチャンスです。


江戸時代から続く隠れキリシタンの名残


――長崎県などの佐世保は、江戸時代に禁教とされてきたキリスト教信仰も深かったとうかがっています。



佐世保市には、世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産のひとつとなっている「黒島の集落」があります。黒島は、佐世保北部の相浦港(あいのうらこう)から黒島旅客船フェリー「くろしま」で約50分の場所にあります。
江戸時代は平戸藩の領地であったため平戸の北の生月 (いきつき) 島や外海(そとめ)からの潜伏キリシタンの移住者が多く、黒島に移住した潜伏キリシタンは、表向きに所属していた仏教寺院でひそかに「マリア観音」の像に祈りをささげ、既存の仏教集落の干渉を受けることなく、自らのかたちで信仰を続けました。
解禁後はカトリックへと復帰し、現在でも全島民の80%近くがキリスト教徒といわれています。彼らの心の拠り所となっているのが黒島天主堂。1902年にマルマン神父の指導の下、島の信者たちが全員建設に参加して建てられました。基礎に特産の黒島御影石を用い、40万個のレンガを積み上げたロマネスク様式の、荘厳ながらも木の暖かみに溢れる教会です。
多種多様な魅力を磨き上げ情報発信を
――佐世保観光コンベンション協会様の今後の方針について



コロナ禍を経てインバウンドの活況が見られていますが、本市を含め、地方都市においては、まだコロナ禍前には戻っていない状況にあります。日本人観光客の誘客を基本に、本格的なインバウンドの集客を見据えて、訪日旅行のリピーター獲得を目指した受入整備などを中心に行うと同時に、経済波及効果を高めるためオンリーワンの地域を目指し、佐世保観光を代表する「ハウステンボス」、「九十九島」の2つのエリアと、旧海軍とアメリカ文化が息づく「港まち・街なか」エリアを中心に、それらから広がる自然、歴史、文化など多種多様な佐世保の魅力の磨き上げを行い、情報発信を行っていきます。
また、観光マーケティングにも力を入れており、「佐世保市の観光の今を見える化」し、地域一体となった観光振興を推進するにあたってデータドリブンによるアプローチの強化を目指しています。観光施設や地域事業者、九州内の観光推進組織などとの連携を強化し、観光客のみなさまから選ばれる観光地となるよう、地域の活性化に取り組んでいきます。


団体概要
団体名 | 公益財団法人佐世保観光コンベンション協会 |
住所 | 長崎県佐世保市三浦町21-1 (JR佐世保駅構内) |
公式HP | https://www.sasebo99.com/ |
公式SNS | ・公式Facebook:https://www.facebook.com/sasebo.kanko ・公式X:https://x.com/sasebo_travel ・公式Instagram:https://www.instagram.com/sasebo_travel_jp |
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