茨城県の南部に位置し、東京都心から約60kmの好アクセスのつくば市は、筑波山の南麓に広がり、豊かな自然と都市機能が融合した魅力的な地域です。江戸時代には、「西の富士、東の筑波」と並び称されるほどの名峰で今日でも観光登山で賑わっています。
「筑波研究学園都市」にも注目が集まり、大学や国などの研究機関が29、そこに150の公的・民間研究所が加わる世界的でも有数なサイエンスシティであることもつくば市の魅力の側面です。
最近のトピックスでは、2005年にはつくばエクスプレス (TX)の開業により、首都圏から観光・ビジネス・通勤・通学の来訪者が増えています。一方、人口は2015年の国勢調査で約22万6,00人でしたが、2025年10月1日現在の人口では26万3,044人と増加傾向にあります。
今回は、一般社団法人つくば観光コンベンション協会 事務局長の貝塚 厚氏につくば市の観光やグルメについて話をうかがいました。

(一社)つくば観光コンベンション協会
事務局長の貝塚 厚氏
江戸時代から「西の富士、東の筑波」と並び称される

――つくば市の魅力と概要からうかがいます。
貝塚 厚氏(以下、貝塚氏)つくば市の北に鎮座する名峰「筑波山」。古より人々に愛され、奈良時代や平安時代には『万葉集』や『古今和歌集』にも多く登場しています。江戸時代には庶民から「西の富士、東の筑波」と並び称されました。当時は、江戸から筑波山がよく見えて、信仰の山でありました。
昭和初期にはケーブルカーとロープウェイも開業し、観光登山で賑わい、マイカー時代の到来でスカイラインなども整備されドライブ観光地としてさらに栄えました。
一時期、筑波山観光ブームが下火になっていたところに、平成に入ると、2005年にはつくばエクスプレス(TX)の開業と登山・ハイキングの人気の高まりにより首都圏を中心に来山者が増えました。このように、“つくばの歴史と観光”という面では「筑波山」がメインであり外すことはできません。
世界でも有数のサイエンスシティ つくば市





一方で、首都機能の一部分散と科学技術振興を目的とする国家プロジェクトとして1960年代から建設が進められた「筑波研究学園都市」にも注目が集まっています。大学や国などの研究機関が29、そこに150の公的・民間研究所が加わる世界的にも有数なサイエンスシティであるということもつくば市の魅力の大きな側面です。
以前、東京からのアクセスは高速バスが中心となっていましたがTXの開業でつくば・秋葉原間が最速45分で結ばれるようになりました。筑波研究学園都市から東京へ行きやすくなり、逆に首都圏から筑波山観光の利便性が高くなり、経済効果も向上するとともに、観光客が増えたことは大変うれしいことです。
つくば市内には4駅設置され、開発も進み居住人口も増加中です。今、子どもの数が減少し、学校の統廃合は全国的な傾向ですが、つくば市では子どもの数とともに新設校も増えていますが、この傾向は全国でもなかなか見られません。
総合的に申しますと、つくば市の魅力とは「自然と科学に親しめるまち」という言葉に集約されます。
2~3月には筑波山で梅まつりを開く


――個々の観光スポットでは。



文筆家・登山家だった深田久弥が記した『日本百名山』※にも数えられる「筑波山」は、気軽に登山が可能で、ハイキングが楽しめるほか、四季折々の豊かな自然も堪能できます。
筑波山は花の種類がとても豊富。春のカタクリから始まり、山桜、ツツジなど。大きな見どころは中腹に1,000本にわたる梅林があります。
「梅まつり」といえば、水戸の偕楽園が有名ですが、筑波山でも2~3月にかけて開催、観梅と合わせて登山・ハイキングも楽しめることから期間中は多くの観光客がいらっしゃいます。頂上標高が877m。ケーブルカーやロープウェイがあり、比較的手軽に頂上まで登れることも人気のひとつです。
頂上からは関東平野が一望でき、見晴らしも良いことから、特に5月の大型連休や秋の紅葉シーズンには多くの観光客の皆さんがいらっしゃいます。筑波山南面中腹には「筑波山神社」※、近隣には「筑波山大御堂」があります。
古来の山岳信仰の名残ともいわれる筑波山神社





筑波山神社手前には、森林の立木をそのまま利用してコースが作られ、ロープが張られた木々の間を渡ったり、ワイヤーを滑車で滑り降りるジップスライドなど様々なアトラクションが楽しめるアクティビティ施設「フォレストアドベンチャー・つくば」も有名です。
「フォレストアドベンチャー・つくば」では木々を渡る


※日本百名山・・・小説家の深田久弥が多くの山を踏破した本人の経験から、「品格・歴史・個性」を兼ね備え、原則として標高1,500m以上の山という基準を設け、選定。なお、久弥は、標高1,500m以内の筑波山を百名山に入れた理由を自身の著作で明記している。その理由として、「この山を推す理由の第一はその歴史の古いことである」とした。
※水戸の偕楽園・・・茨城県水戸市にある日本庭園。国の史跡及び名勝に指定されている。伝統的に、後楽園や兼六園と並んで日本三名園の一つで梅林が有名。
※筑波山神社・・・筑波山を神体山として祀る神社。筑波山は『常陸国風土記』に見える頃より神の山として信仰が深く、関東平野に人が住み始めた時代からの信仰ともいわれている
研究施設では筑波宇宙センターなどが人気





公開施設なども備え最先端研究に触れられる筑波研究学園都市では、研究所などの見学とともに公園や遊歩道などが整備され、街の散策も大きな魅力です。主な施設は筑波大学、宇宙航空研究開発機構(JAXA) 筑波宇宙センター、産業技術総合研究所や国土地理院などです。
研究機関の一部は常設で見学できる展示施設もありますし、年に一度程度はイベントなども行われる大々的な一般開放も行われています。中でも筑波宇宙センターが人気のようです。
多くの公園に恵まれ散歩に最適





つくば市には200以上の公園があり、自然豊かな場所からスポーツ施設が充実した場所まで多岐にわたります。とてもきれいに整備され、街歩きにも適しています。また、歩行者と自転車のための専用道路「ペデストリアンデッキ」は、北は筑波大学から南は洞峰公園や赤塚公園まで、全長約4.8kmまで伸び、緑豊かな美しいコースです。ペデストリアンデッキを歩きながら公園を巡る散歩は楽しいですよ。
また、つくば市は、「自転車の街」でもあるんです。
「つくば霞ヶ浦りんりんロード」という、つくば市の北西にある桜川市から、つくば市を通ってさらに北東の土浦市、霞ヶ浦湖岸までを結ぶ、全長約180kmのサイクリングコースがあります。また、駅には自転車レンタル実施しており、自転車を借りて、駅の周辺を気軽にサイクリングされる方もいらっしゃいます。
「つくば霞ヶ浦りんりんロード」で爽快に風を切る





2019年、このコースは国が指定する世界に誇るサイクリングルートとして、国内外にPRするための「ナショナルサイクルルート」 ※認定を受け、このコースを自転車で走る方も多いです。
また、駅には自転車レンタル実施しており、自転車を借りて、駅の周辺を気軽にサイクリングされる方もいらっしゃいます。
当協会はこれからの観光スポット・ツールとして、「自転車」などもコンテンツに加えて進めていく方針です。
※ナショナルサイクルルート・・・日本を代表し、世界に誇りうるサイクリングルートとして国(国土交通省)が指定する制度に基づいたサイクリングコース。サイクルツーリズムを協力に推進、新たな観光価値を創造し地域の創生を図ることを目的としている。
温泉施設を兼ねた旅館やホテルも豊富に


――宿泊施設の紹介を。



筑波山エリアには、温泉を備えた老舗の旅館とホテルがあり、筑波山の自然と関東平野一望の景色が楽しめます。一方、研究学園都市エリアでは、宴会場を備えた大型ホテルや駅近で使い勝手の良いビジネスホテルも多く、大学や研究所や国際会議場などで学会や国際会議などの開催も多いことから、宿泊者は全国から来訪し外国人の宿泊も多いです。
つくば市にいらした方には、観光・ビジネスそれぞれ目的に合わせてお泊りいただけます。また筑波山の宿泊施設は、日帰り温泉にも対応していますので是非お楽しみ下さい。





筑波山温泉の泉質は、アルカリ性単純温泉です。ph値が高く、肌がすべすべになることから“美肌の湯”として人気があります。登山やハイキングでの疲れを癒やすため、日帰り温泉を利用される方も多くいらっしゃいます。展望露天風呂のあるホテルからの眺望は素晴らしく、特に夜景は一見の価値ありですので、宿泊されてのんびりと過ごされることをおすすめしています。
※日本夜景遺産・・・国内各地の美夜景を観光資源としてアピールし夜間観光立国化の促進を担うプロジェクト。日本新三大夜景の北九州市・横浜市・長崎市とともに筑波山も夜景遺産に認定されている。



最近ではキャンプブームを背景に市内でもキャンプ場・オートキャンプ場が整備され、ホテル・旅館以外でもアウトドアでお泊りされる方が増えています。
意外!? つくばはラーメンとパンの聖地


――それではグルメはいかがですか。



つくばは温暖な気候と肥沃な大地を擁していることから、米、野菜、果物など食材の宝庫の地でもあります。筑波山麓で生産される「筑波北条米」は、昭和初期に皇室に献上されていました。その品質の高さから現在もブランド米として人気が高く、一般にも一部流通しますが、都内の高級料理店で年間契約され使われているほどおいしいお米です。
福来みかんを用いたまぜそばを各ラーメン店が開発





全国屈指のラーメン店激戦区であり、有名・人気店も多く、週末は市外はもとより県外からも多くのラーメンファンが訪れる“ラーメンの街つくば”。
近年、ご当地ラーメン開発プロジェクトとして、筑波山麓で自生する福来みかんを用いた「福来らーめん・まぜそば」を各店舗で開発、期間限定で提供するとともに、イベントなどにも出店してPR販売しています。福来みかんは香りが強く、粉末や油として添えることで柑橘系の香りを楽しめます。
毎年、パンまつりを開催、各店舗が出店





そのほか、筑波研究学園都市として、国内外から多くの人が転入また来訪することから、国内外各所の本格的な料理を提供する店も多く、おいしいパンやコーヒーも人気です。イベントではつくばパンまつりを年1回に開催し、2025年では5月31日~6月1日の両日に、つくばセンター広場で開催されています。
「つくばのおさけ推進協議会」設立でPRを強化


――日本酒、ワインやビールなどの特産品のPRを強化されているようですね。



つくばでは美味しい日本酒・ワイン・ビールも醸造されており、2024年5月には、つくば市内で生産されたお酒の普及促進を図り、地場産業を盛り上げるべく、市内の酒蔵2社、ワイナリー4社、ブルワリー2社が一体となり、「つくばのおさけ推進協議会」(事務局:当協会)を設立し、つくばの特産品としてPR・販売に努めています。同年9月には、お披露目イベント「つくばのおさけで乾杯!」も開催しました。





参加者は生産者から直接お酒の説明を受けられるなど、お酒ファンと生産者が交流でき、つくばのおさけを日頃から愛されているお客さまはもちろん、初めて試飲されたお客さまも多数おられ、新たな出会いと発見のあるイベントとなりました。





現在、イベントなどへも出店しPRを推進しており、2020年1月にはいわゆる“つくばのおさけで乾杯条例”も制定されていることから国内外から参加者がある学会や国際会議などでのレセプションで用いられるよう、またお土産品として選定してもらえるよう努めています。なお、下記の酒蔵、ワイナリー、ブルワリーがつくばのおさけ推進協議会に会員です。
- 日本酒・・・浦里酒造店(霧筑波・浦里)、稲葉酒造(男女川・すてら)
- ワイン・・・Bee’s Knees Vineyard、Tsukuba Vineyard、Tsukuba Winery、le bois d’azur
- ビール・・・つくばブルワリー、Twin Peaks Mountain Brewing






――アニメツーリズムにもお力を入れていますが。



3年前に茨城県の補助金を得て、アニメを活用した観光誘客を企画しました。世界的なアニメ制作会社WIT STUDIOのサテライトスタジオがつくばにできました。アニメは国内だけではなく世界的にサブカルチャーとして人気でコンテンツの活用のほか、アニメの聖地・秋葉原とつくば市がTXで結ばれているというのも縁といえます。
一昨年では、人気アニメを活用し、ステンプラリー、作品展、企画展、グッズ、コラボフーズを行いました。
当協会としてはまずはつくばに来ていただき、スタンプラリーで周遊してご当地グルメで飲食、さらには宿泊など経済効果が生まれることを期待しています。
来年度は未定ですが、つくば市と引き続き連携し、アニメコンテンツを活用したアニメツーリズムを検討中です。
新住民をターゲットに筑波山などの市内観光・魅力スポットを紹介


――観光と地方創生について。



観光は大きな経済効果をもたらす産業です。つくば市中心部は栄えていますがその周辺の商店街はやや閑散とした印象があります。つくば市全体を盛り上げるためにも、中心部だけではなく、昔からある街並みにも魅力あるスポットもありますから、そういうところも回る仕組みをつくば市と連携して実施しています。
※TSUKUBAおでかけjourney!・・・つくば市が企画展開する観光施策、つくば市内を4つのテーマでめぐる周遊観光モデルコースを案内している。市内に点在する自然、歴史、科学、文化といった多様な地域資源を連携させ楽しく周遊できる。



つくば市の経済や地域活性化を図るためには、つくば市中心部や筑波山だけではなく、隠れたスポットを周遊していただくことが肝要で市全体を盛り上げていきたいです。
――今後の貴協会の動向は。



市や関係機関などと連携して引き続き観光誘客とコンベンション誘致に力を入れていきます。観光に関しては、TX沿線を中心に新しく転入されてきた方々をターゲットとして、筑波山はじめ市内観光・魅力スポットを紹介して周遊してもらいながら郷土としての愛着を育んでもらうよう努めていきます。具体的には市民モニターツアーなどを考えています。
コンベンションに関しては、1999年6月に茨城県が整備した「つくば国際会議場」は、約1200人が入れる大ホールのほか、中小ホールや会議室が設置されており、多言語の翻訳ブースがあり、国際会議にも十分対応できる施設です。





つくば市は研究学園都市として大学や研究機関が集積し、学会のイベントや国際会議が開かれやすい環境です。国も茨城県も強力にサポートし、2016年にはG7の科学技術大臣会合、2020年にはG20の貿易デジタル経済大臣会合など、さまざまな国際会議がつくば市で開催されています。
来訪者に宿泊とともに長い時間市内に滞在してもらえるよう観光やグルメなど魅力を十分伝えることが重要であると考えており、これまでの紙媒体のマップやパンフレットに合わせ、デジタルマップや情報発信ツールとしてSNSを効果的に活用していきます。当協会としては、つくば市の経済団体としての一翼を担うべく、観光誘客やコンベンション誘致に努め、経済発展に寄与して参ります。
団体概要
| 団体名 | 一般社団法人 つくば観光コンベンション協会 |
| 住所 | 〒300-3292 茨城県つくば市筑穂1-10-4 |
| TEL | 029-869-8333 |
| FAX | 029-869-8332 |
| 公式HP | https://ttca.jp/ |
| 公式SNS | Facebook:https://www.facebook.com/tsukuba.ttca X:https://x.com/ttca8333 Instagram:https://www.instagram.com/ttca8333/ |




コメント