那覇市首里石嶺町にある座波(ざは)菓子店は、旧盆や旧暦行事ごとにお店に行列ができる老舗店。
人気の秘訣はどこにあるのでしょうか?
座波菓子店の座波 洋子さんにお話を伺いました。
1.ピーナッツの風味がたまらないクンペン
座波菓子店の看板商品は「クンペン」。
クンペン(薫餅)は琉球菓子の一種で、中国から伝わったといわれる焼き菓子です。
通常のクンペンは、小麦粉・砂糖・卵をあわせてたねを作り、平らな形に整え、中にゴマ餡を入れて焼き上げます。
座波菓子店では餡にピーナッツを使っているのが特徴で、独特のコクと風味がある餡がとても美味しいと評判です。
3代目店主(座波 広光さん)の妻・座波 洋子さんによれば、2代目店主(座波 朝進さん)が試行錯誤を重ね、ピーナッツ餡のクンペンを開発したのだそう。
「ゴマ餡が一般的だった時代にピーナッツ餡を取り入れたのが画期的で、県内外、海外からも注文が入るほど人気商品になったと聞いています」と洋子さん。
「当店のクンペンは皮にもピーナッツを砕いて入れたり、餡がピーナッツ多めの配合にしたりといろいろ工夫しています。ありがたいことに、夕方には売り切れてしまうこともあります」
座波菓子店では大小のクンペンを販売。
贈答用の箱詰めも用意されていて、取材中も大量に購入していくお客様が途切れません。
また、箱の掛け紙には首里城が描かれていて、これもとても好評だそうです。
2.座波菓子店の歴史
座波菓子店は1948(昭和23)年、首里久場川町で初代の座波 嘉目さんと妻・アサさんが切り飴屋として創業したことが始まりです。
嘉目さんは戦前から那覇の辻町や本島北部の名護で菓子作りの修行をしていて、終戦後は配給所から手に入れた砂糖で切り飴を作っていたといいます。
この頃はまだ店舗を持たない行商スタイルでした。
1955(昭和30)年頃、首里儀保町へ移転。
1986(昭和61)年には儀保店を新装開店します。
当時、首里地区の菓子店同士で新年会やピクニックをするなどの交流もあったそうです。
そして2004(平成16)年、道路拡張工事のため、現在の店舗がある首里石嶺町へ移転してきました。
洋子さんは、「地元ですから、首里城火災のときは従業員一同、とても心を痛めました。掛け紙の図案元はもともと店にあったものですが、掛け紙にしたのは焼失してしまった首里城を忘れてほしくないという想いも込めています」
座波菓子店ではクンペン以外に、ちんすこうや赤まんじゅう、お餅など、昔ながらの菓子がたくさんあります。
沖縄のお盆や旧盆・旧正月などの年中行事の際には、お供え用の餅やお菓子の予約注文が殺到します。
店頭でもたくさん用意して特別に設けたスペースに並べるそうですが、買い求めるお客様が朝から行列を作ることも。
「行列にひかれて、観光にいらしたお客様がふらっと立ち寄られることもあります」
中には空港では売っていないような沖縄ならではの菓子を求めてくることもあるそうで、クンペン以外に、沖縄でも通常はなかなかお目にかかれない「松風(まちかじ)」という菓子を買うことが多いといいます。
松風は沖縄の結納にかかせない、赤いせんぺいのようなお菓子。
縁を結ぶという意味で、“結び切り”の形をしています。
いつまでも仲良く幸せに過ごせるようにと想いが込められた琉球菓子です。
「ただ割れやすいので、お土産にはあまり向かないと思います(笑)」と微笑む洋子さん。
でも大丈夫、座波菓子店には美味しいお菓子がほかにもたくさんあるのです。
3.琉球菓子以外もおすすめがいっぱい
お店に入って正面には洋菓子・和菓子洋菓子・琉球菓子のショーケースが並んでいます。
洋子さんおすすめのケーキは大きな栗がのった「ガトーマロン」。
「甘すぎず、ほろ苦いコーヒークリームが大人の味わいです」
スタッフの佐藤 和子さんのお気に入りはミロワールカシス。
甘酸っぱさがたまらない、見た目も華やかなムースケーキです。
月餅やレモンケーキ、パウンドケーキ、マフィン、栗ようかんなど定番のお菓子のほか、自家製の洋酒漬け餡がたっぷり入ったフルーツまんじゅう、チーズまんじゅう、田芋クリーム入りで花の形がかわいらしい花ターンムなど、オリジナル菓子もたくさんそろっています。
最近は、沖縄県で有名なタレントのテレビ番組で紹介された「栗パイ」が特に人気だそう。
「旧暦ごとや年中行事に密着した商売は昔から変えていません。お客様が求められることには応えたいし、座波菓子店に行けば何とかなると頼りにしてほしいです」と、笑顔の洋子さん。
地元客はもちろん、観光客にも行事の説明やお菓子の意味を丁寧に教えることもあり、美味しいお菓子だけでなく、温かな雰囲気も座波菓子店の魅力のひとつなのでした。
沖縄ならではのクンペンや菓子、リーズナブルなケーキが買える座波菓子店、沖縄に来たならぜひ立ち寄ってみて。
(取材:2024年1月)
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