読谷村のやちむんの里の一角に、専用の手作り登り窯を有する窯元があります。
横田屋窯と書いて「ゆくたやがま」と読みます。
1.専用の登り窯で年一回窯炊き
やちむんの里には4つの登り窯がありますが、専用は横田屋窯が所有するものだけ。
残りは複数の窯元が共同利用しています。
横田屋窯では作品が登り窯いっぱいになり次第焚きます。
窯焚きは年一回。 専用なのでそのタイミングは自由に決められます。

「伝統的な手法を大切にすると、どうしても年一回になるんです」と話すのは横田屋窯二代目の知花 清人さん。
ちなみに2023年の窯炊きは5月だったそうです。
壺屋焼の流れを汲む手法にこだわると窯炊きは年一回になるわけですが、大量生産には向きません。
そのため、現状では需要に応えられておらず、毎週のように新規の引き合いがあるものの、すべて断っている状況のようです。
したがって、作品を購入するのはなかなかハードルが高いようですが、直接訪れれば買えます。
なので、横田屋窯の作品を手に入れたい場合は、ぜひ工房に足を運んでいただきたいと思います。
さて、この工房は清人さんの父・實さんが2000年に立ち上げ、奥さんの恵子さんとともに営んできました。

写真左から竹西 裕研さん、知花 實さんと奥さんの恵子さん、そして清人さん。

2015年には大学を卒業した清人さんが加わります。
「昔から大切にされてきたスタイルを守りつつ、現代の暮らしにも合うやちむん(焼物)を作るよう心がけています」

現在は弟子の竹西さんもいっしょにやちむん作りに精を出しています。
上の写真は絵付け前の化粧掛けをしています。
2.お食事タイムをなごみの時間にする器
作品の特徴について清人さんはさらに「あまり主張しすぎてもいけない、訴えかけすぎてもいけない。疲れて帰ってきて、ごはんを食べるときにホッとするような器であることを意識しています」と話します。
お皿、まかい、壺、湯呑みなどいろいろな作品がありますが、いずれもそうしたホッとするやちむんであることは共通のようです。

やさしい青が心を癒してくれそうな唐草模様のお皿。

こちらも唐草模様のお皿のバリエーション。

先人から受け継いだ様式美を感じさせる葡萄紋のお皿。

楊枝壺といった小物にも伝統的な美的センスがよく現れています。
「今は国内がメインですが、今後生産量が増やせたら海外にもうちの作品の魅力を発信していきたい。そして現地に行って、沖縄のやちむんの良さを共有したいですね」と清人さんが展望を語ってくれました。

Text:吉田 直人
Photo:根原 奉也
(取材:2023年9月)
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