沖縄を代表する伝統工芸品の一つが、「やちむん」と呼ばれる焼き物。
ぽってりとした厚みと素朴な風合いが特徴の、普段使いにぴったりの焼き物です。
沖縄各地には多くのやちむんを作る工房がありますが、なかでも読谷村はやちむんの一大生産地です。
さまざまな工房が集まり、それぞれで個性的な器を作り出しています。
そんな読谷村にある「陶眞窯」は、沖縄でも屈指の大きなやちむん工房。
窯主の相馬 正和さんが1978年に築いた工房で、現在では10余名もの職人が日々やちむんの腕を磨いています。
陶眞窯の工房は、県内でも珍しくすべての工程が見学OK。
職人の技を間近で体験出来るとあって、本気で陶工を目指す来訪者も多いといいます。
もちろん気軽な見学でも大丈夫。
何百年も昔から伝えられてきた技の粋を、間近で感じてみてはいかがでしょう?
1.器が完成するまでの工程を細かく見学できる
まず工房に入って驚くのは、その広さ!
一日200〜300個もの器がここで作られるというのも納得の規模感です。
一つの器が完成するまで、20以上もの工程が必要といいます。
入口付近のスペースは、器の成形作業の真っ最中。
ろくろを回し、あっという間に形作られていきます。
職人さんは、なんと一つにつき1、2分で成形するとのことで、まさに「職人技」。
見事な手つきに見惚れてしまいます。
広い工房を歩いていると、釉薬を塗ったり絵付けをしたり、器の仕上げを行ったりと、分業制で作業が進められていることがわかります。
それぞれの工程を担当する職人さんが、よどみなく手を動かしていく様は全く無駄がなく、美しささえ感じるほど。
こちらは大きなガス窯。
月曜日と木曜日が器を窯に入れる日だそうで、取材時はタイミングよく窯に入れる瞬間を見ることができました。
じっくり温度を上げながら焼き、火を止めてからもさらにじっくり温度を下げなければならないので、火を入れてから翌々日まで器は窯の中。
見学することで、器一つを作るのに大変な手間と労力がかかることが実感できますね。
陶眞窯では主にガス窯が使われていますが、実は薪で焼き上げる登り窯も持っています。
ごくまれに、窯主の相馬正和さんの作品を焼くことがあるとのことで、使われている様子はなかなか見られませんが、窯自体はリクエストに応じて見学可能です。
2.隣接する直売所でやちむんの購入もOK
工房の隣には直売所が建てられていて、陶眞窯の器を他店に比べて割安で購入できます。
唐草や刷毛目(はけめ)の赤絵など、オーソドックスな沖縄の伝統の模様だけでなく、職人さんが独自でデザインしたものも。
窯主の相馬さんの作品も売られていますよ。
湯のみやコーヒーカップ、丸い形状の皿、四角い形状の皿、マカイと呼ばれるお椀など、器の種類も豊富。
一つ一つの器に手間暇がかけられていることを考えると、大切に使いたくなります。
ぜひ吟味して購入してみてくださいね。
もし見学して「自分でも作ってみたい!」と思ったら、ぜひ陶芸体験を。
ろくろを使った成形からシーサーづくり、絵付け、さらに土づくりまで、ほとんどの工程をそれぞれ体験できます。
また、陶芸体験を予約した方には、スタッフによる工房見学ツアーのサービスも。
併せての利用がおすすめです。
ただやちむんを購入するだけでなく、よりやちむんに対する思いが深まる工房見学。
一年を通して楽しめることも魅力ですので、旅の思い出の一つに、ぜひ加えてみてください。
Text:仲濱 淳
Photo:白木 裕紀子
(取材:2024年2月)
コメント