読谷村伊良皆の静かな住宅街の中にある小さな陶房シマシマポタリ。
ひっそり感いっぱいにたたずんでいます。
とても目立たない陶房ですが、それでも根強いファンが通って来るのは、作品に人の心をつかむ力があるからに他なりません。
1.かわいらしい絵柄のモチーフは沖縄系が多い
この陶房の作品は、沖縄伝統のいわゆるやちむん(焼物)とは趣が異なります。
壺屋焼などの系統でもありません。
それが、一目でわかるのは作品全体に共通するパステル調の色合い。
ブルーやピンクなどの柔らかい色彩が目を引きます。
壺屋焼などによく見られる力強さとは真逆の「かわいらしさ」とでもいったらいいでしょうか。
ちなみに土も県外から取り寄せているそうです。 ところがモチーフについては、沖縄的なものが見られます。
こちらのお皿のモチーフは「カタブイ」だそうです。
カタブイとはスコールのように突然降り出す雨で、ある地点では大雨なのに100m先は晴れている、というような局地的な降雨をいいます。
雨と青空がひとつの皿に表現されている様子は、まさにカタブイですね。
裏にもちゃんと絵柄があります。
これなら洗い物も楽しくできそうです。
左のマグカップの絵柄は電照菊。
電照菊とは開花時期をコントロールするため、夜間に電球の光を当てて育てる菊の栽培法のことです。
夜に電照菊の畑を見ると、まるでイルミネーションのように幻想的な光景を目にすることができます。
右のマグカップは、石ころがモチーフだそうです。
角皿もモチーフは石ころ。
こちらのお皿は取っ手が付いています。
そのモチーフは花のつぼみだとか。
便利な上にかわいすぎますね。
2.薄い色を塗り重ねて独特の透明感を出す
シマシマポタリの主である山城 真理さんは京都府出身で、もともとは伝統的な染色をやっていたそうですが、立体的なものをやってみたいと陶芸の世界に足を踏み入れました。
沖縄に来てからは眞正陶房で10年ほど修業した後、9年ほど前に独立して自らの陶房を立ち上げました。
2016年には現在の場所に移転したそうです。
陶房内には電気釜も完備。
ここで焼き上げまで行っています。
前述のように、作品の特徴はなんといってもその色合いのように思われます。
「薄い色を塗り重ねていくと透明感が出るんです。焼き上がりの色は偶発的に出るもので、なかなか意図して出せるものではありません。だからこそ思い通りの色が出たときはうれしいですね」と山城さんは話していました。
Text:吉田 直人
Photo:根原 奉也
(取材:2023年8月)
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