玉陵(たまうどぅん)は、琉球王国最盛期といわれる尚真王(しょうしんおう)の時代に建てられた陵墓です。
2000年には世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」に、2018年には建造物として沖縄県初の国宝に指定されました。
首里城から歩いて約5分のところにあるので、訪れないのはもったいない!近くまで来たら、ぜひ足を伸ばしてみてくださいね。
1.王家の墓に垣間見える権力争いのドラマ

きれいな石垣で囲まれた門。
くぐるときの足元に使われている石は、1501年の創建当時の石がそのまま残されているそうです。早速、琉球王国の歴史にふれることができる見どころのひとつです。

門をくぐると開けた場所があります。
地面に敷き詰められた、さらさらの白砂は珊瑚でてきたもの。
神の島と呼ばれる久高(くだか)島の珊瑚が使われ、邪気を取り払うという意味が込められています。

その開けた場所に唯一あるのが玉陵碑(たまうどぅんひ)。
創建時に建てられたもので、沖縄戦の弾痕がありますが、500年余りの間ここに残されています。
この碑文に刻まれているのは、玉陵に葬られている王家の人々の名前。
しかし尚真王の長男と次男の名前が記されていないことから、王室内に勢力の対立があったと考えられます。
2.歴代の琉球国王が葬られている玉陵

二つ目の門をくぐったところにあるのが玉陵の墓室。
1501年に尚真王の父親である尚円王(しょうえんおう)の遺骨を埋葬するために作られ、それ以降の歴代の国王が葬られています。墓室は向かって左から、東室、中室、西室の3つに分かれているのが特徴です。

真ん中の中室は、洗骨までの遺骸を安置する場所として使われていました。
洗骨とは遺骨を洗い清める沖縄で古くから行われてきた埋葬方法です。

左側にある東室は、創建当初、洗骨後の王と王妃の遺骨が安置された場所です。
玉陵は首里城をモデルに作られたといわれており、東室を正面から見ると首里城の正殿に似ていることがよく分かります。この独特の作りは破風墓と呼ばれ、玉陵は沖縄最古で最大級の破風墓でもあります。

右側の西室は、王と王妃以外の玉陵碑に名前が記されている、王子や王女など限られた王族が葬られました。
3.まだまだある!玉陵の注目ポイント

墓室前の欄干(らんかん)の細かい造形も独特。
技術的にも優れており、独自の発展を遂げた琉球王国の貴重な建築文化を象徴しています。

塔の上に置かれた獅子。子どもの獅子を抱っこしているように見えます。
今でいうシーサーにあたりますが、立ち上がった珍しい形をしています。

玉陵の門の外にある東の御番所(あがりのうばんじゅ)。法事のときに国王の控え室として利用されていました。
復元された現在の建物では、戦前の玉陵の様子が分かる写真などが展示されています。
玉陵は琉球王国の歴史について深く知ることができるスポットです。首里周辺の散策コースに加えて訪れてみませんか?
Photo&text:金城 絵里子
(取材:2020年2月)
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