日本国内で“チーズ作りが盛んな地”というと、酪農王国の北海道を思い浮かべる方が多いと思いますが、実は湿度の高い沖縄県もおいしいチーズを作るのに適した土地、ということをご存知でしょうか?
「チーズを作りはじめたのは、もともとは自分のためでした」と話すのは、南城市にお店を構えるチーズ専門店「The Cheese Shop」の代表John Davis(ジョン・デイビス)さんです。
1.「手に入らないなら作ってみよう!」がキッカケでした
1976年にイギリスから来日したジョンさん。
東京で英会話学校や短期大学で英語の講師を経験した後に独立をし、東京と札幌に英会話教室をオープン。
その後、東京から札幌に移り住み結婚をしましたが、2004年に「雪のない、暖かいところに住みたい」と、夫婦で沖縄移住をしました。
日本での生活にも慣れ、日本料理も好きになったジョンさんですが「日本ではナチュラルチーズが手に入らなかった」と、当時の不満をポロリ。
「私にとっては醤油や味噌のような存在で、なくてはならないものでした。当時、日本ではプロセスチーズ(ナチュラルチーズを粉砕、加熱溶融し、乳化したもの)が一般的でナチュラルチーズがなかったんです。おいしいチーズが食べたければ、自分で作るしかない!と思い、牛乳を大量に買ってきて、作りはじめたんです。それがきっかけでした。『チーズは北海道でないと作れない』と思われている節がありますが、チーズの産地として知られている南イタリアやシチリア、ギリシャと沖縄は気候が似ているので、実はチーズ作りには適しているんです」
2.沖縄素材を使った個性的なチーズ
店頭で購入できるチーズは30種類ほど。
今まで数え切れないほどたくさんの種類のチーズを作ってきたそうですが「作り過ぎて、減らしました(笑)」とのこと。
親泊牧場の敷地内にあるチーズ工場で、搾りたての牛乳を、生乳の成分や風味を壊さないよう低温殺菌(63度で30分)し、チーズを仕込んでいきます。
「ここは沖縄ですから“イギリスのチーズ”を作りたいとは思っていません」とジョンさん。
島ラッキョウやシークヮーサー、サクナ、紅芋、黒麹菌などの沖縄素材を使って、沖縄でしか味わうことのできないチーズを開発してきました。
3.ジョンさんイチオシ!大人気の“焼くやつ”
こちらは南城市のバジルと島ニンニクで作ったペーストを混ぜ込んだ「大里バジル」。
爽やかな香りが口いっぱいに広がります。
The Cheese Shopで“焼くやつ”と呼ばれている「ハルミ」は焼いても溶けないので、フライパンで表面が色づくまで焼いたり、フライにしたり、お鍋の具材にしても。
ミルキーな味わいと、キュッ、キュッという独特の食感が楽しめます。
牛乳の味がストレートに伝わるヨーグルトもかなりおすすめ。
「おいしい」と口コミで広がったThe Cheese Shop。
オンライン販売もあるのですが、店頭では試食も可能なので、購入前にお気に入りを見つけてみては?
Photo&text:舘 幸子
(取材:2023年4月)
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