琉球ガラス村は、沖縄県内最大の手作りガラス工房です。
さまざまな資格を持ったガラス職人がたくさんいて、その制作作業をいつでも目の前で見ることができます。
また、2000点を超えるガラス製品を展示販売していて、お土産や贈り物の購入にも最適。
大幅リニューアルも進行中で、さらに楽しいエンターテイメントスポットとして進化中です。
1.1980年代にいくつものガラス工場を統合したのが始まり
もともと琉球ガラスは明治期から作られていました。それが工芸として開花したのは戦後です。
米軍が持ち込んだコーラやビールの廃ビンを材料として使いました。
そのため、コカコーラのビンで作ると薄いブルーに、ビールビンだと茶色に、セブンアップなら緑色の作品になりました。
こうした、廃ビンの色がそのまま製品の色合いとなって出ることが、当時のアメリカ人に好まれる面もあったかもしれません。
沖縄に駐留するアメリカ軍人やその関係者が、そうした琉球ガラス製品を大量に購入するようになりました。
それに対応するように、琉球ガラスの工房ではパンチボウルセット、ワイングラス、シャンパングラス、サラダボウル、ガラスの造花など、アメリカ人のライフスタイルに合うような製品を数多く生産するようになったのです。
こうした花瓶や花を模したガラス製品などは、主な顧客がアメリカ軍関係者だった時代を彷彿とさせます。
1970年代半ばまでは、このようにアメリカ人相手がメインでしたが、1975年の沖縄国際海洋博覧会を転機として、国内観光客のお土産品としても脚光を浴びるようになりました。
それによって市場も拡大していきました。
しかし同時に競争も激しくなります。
一方でオイルショックによる燃料価格の高騰、原料となる廃ビンの入手困難など、業界を取り巻く環境も厳しさを増しました。
そこで、エネルギーコストの削減を目的に7つの工場が集まって「琉球ガラス工芸協同組合」が結成されました。1985年のことで、これが琉球ガラス村のルーツとなります。
そして1987年、組合を母体として現在の琉球ガラス村がオープンしました。
今から1700年以上前に作られたローマガラスなど、貴重なコレクションも展示されています。
2.工場、個展、ショップなど魅力あふれる施設内容
この施設の中核のひとつになっているのは、やはり工場です。ここには県内最大の窯があります。
これはいわゆる溶解炉で、1300度という高温でガラスの原料を溶かし、そこから棒で巻き取って回しながら息を吹き込んだり、型に入れたりしながら成形していきます。
この窯には原料を溶かす「るつぼ」が13もあるため、ただ大きいだけでなく、多くの色が使えることが特徴です。
この作業は職人さん4人1組で行います。
営業時間内はお昼休み以外、作業風景を見ることができます。もちろん、雨の日の見学もOKなので期待を裏切りません。
ちなみに、成形したガラス作品は徐冷窯というものでゆっくりと冷ましていきます。
また翌朝からすぐに作業できるよう窯の温度を保つ必要があり、夜間も燃料のコントロールをしなくてはなりません。そのため、施設がクローズになっても、工場自体は24時間稼働しています。
窯の熱気と職人さんたちの真剣さを感じながら、制作風景を間近に見学することができます。
一般のお客さんもガラス吹き体験ができます。
お子さんにとっても貴重な体験になるでしょう。
体験で、まだ熱いガラスの口を拡げているところです。
自分だけのオリジナル作品ができつつあります。
もうひとつの見どころは、琉球ガラス村に所属する「沖縄県工芸士」などの資格を有する12名の職人の作品を紹介する、いわば個展です。
3ヵ月ごとに取り上げる職人が変わるため、年に数回行けば多彩な作品が鑑賞できます。
個展を見ていると、琉球ガラスが単なる実用品の域をはるかに越えて、芸術の域に達していることがわかります。
琉球ガラス村グループには12名の沖縄県工芸士がいます。
この人たちの個展が、3ヵ月周期で変わりながら開催されているわけです。
宇宙の広がりや深海の神秘さなど、非常に想像力をかき立てられる作品が数多くあります。
工場で作られた作品を展示販売するショップも、もちろん見逃せません。作品数は約2000点。すべて手作りなので、1点1点違います。
そのため、見ているだけでも楽しめます。
値段もさまざまで、お土産や贈り物のショッピングには最適です。
また、琉球ガラス村はベトナム・ハノイにも工場があります。
沖縄の工場だけでは生産が追いつかないこともあり、1995年に「ベトナム琉球文化工芸村」を現地に設立しました。このベトナム工場で制作された作品もショップで展示販売されています。
お土産はぜひこのショップでどうぞ。
普段使いから大切な人への贈り物など、あらゆるシーンで使える作品が揃っています。
お仏壇で使われるような仏具も琉球ガラス製が増えていて、こちらでも展示販売されています。
ご先祖さまも喜びそうな美しさです。
美しいガラスはアクセサリーの素材としても最適です。
色彩もほとんど無限に表現できるので、どなたにも合うような多彩なバリエーションが揃っています。
琉球ガラスは、ネームプレートや表札といった意外な実用品にも応用が可能。
その用途の広さに驚かされます。
NAHAマラソンの完走メダルは、実は琉球ガラス村が作っています。
金属やプラスチックではなく、ガラスというのが粋ですね。
フランス料理などの洋食にもよく合う琉球ガラス。
高級なお料理の味をさらに引き立てそうです。
緑の植物と琉球ガラス作品を合わせると、相乗効果できれいな風景になります。
2020年の9月にオープンを予定しているガラスガーデンでも、このコンセプトが採用されているそうです。
ショップが入っている建物の玄関付近で頭上を見上げると、このようなステンドグラスが。
あまりの美しさに首の痛みも忘れて、しばらく見とれてしまいました。
3.リニューアルでさらに充実のエンターテイメントスポットへ
琉球ガラス村は、2020年7月現在、大幅リニューアルを進めています。
同年9月には新しい施設としてガラスの自由研究室やガラスガーデン、巨大万華鏡、カフェなども誕生し、さらに充実のエンターテイメントスポットになります。
また、各施設へのアクセスが容易になるよう、レインボーストリートというシステムも導入。これまで以上に利用しやすくなります。
これだけの充実した施設が入場無料というのは、大変太っ腹といえます。
しかも、那覇空港から約20分という近さ。
老若男女が楽しめるので、行かなきゃ損といってもいいでしょう。
こちらはアウトレットコーナーです。
よほど注意しなくてはわからない小さなくぼみなどのある商品が、低価格で提供されています。
ガラス素材を使ったフォトフレームなどを作る体験コーナーもあります。
text: 吉田 直人
Photo:根原 奉也
(取材:2020年8月)
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