今や沖縄の特産品として大人気な沖縄のお酒「泡盛(あわもり)」。
その歴史は古く、約600年前にさかのぼります。
15世紀初頭、古の琉球は中国や東南アジアと貿易を開始し、さまざまな貿易品とともに蒸留酒を輸入しました。
その蒸留法を見習って国産の蒸留酒をつくりだしたのが、日本最古の蒸留酒「泡盛」です。
現在、沖縄県内には47の泡盛製造所があり、さまざまな個性あふれる泡盛をつくっていますが、今回、沖縄本島の名護市(なごし)にある「龍泉酒造」に伺ってみました。
那覇空港がある那覇市から名護市までは、車で1時間ほど。
約70kmのロングドライブのあとは、ドライブの一休みに龍泉酒造に寄って、ゆっくり工場を見学して、自分の好きな泡盛を見つけてみませんか?
泡盛の魅力を知ると、泡盛がより美味しく感じられますよ♪
1.旨い泡盛はこうやってつくる!心を込めた職人の手技で丁寧につくる龍泉酒造のお酒
国道58号を北上し、名護市の仲尾次(北)交差点から右折して約500m。
龍泉酒造がある仲尾次エリアは、住宅街と商店が軒を並べるローカルエリアで、周辺には郵便局や刺し身屋、ハイケイ(廃鶏)販売店、お菓子店などがあります。
ではさっそく、工場から見学してまいりましょう!
工場は店舗がある事務所のすぐ左手。工場長の黒澤 誠二(くろさわ・せいじ)さんが案内してくれましたよ。
こちらは「回転ドラム」。
泡盛は主にタイ米を原料としていますが、龍泉酒造では1回の泡盛づくりでタイ米750kgを使用。
洗米したお米の水を切ったら、1時間かけて蒸気で蒸し、黒麹菌を入れて一晩寝かせます。
三角屋根が特徴の「三角棚」には、次の日の朝イチに回転ドラムからお米を移動します
「コンベアなどでお米を移す作業をする酒造所さんもいますが、ウチは、頭を突っ込んで手で掻き出してバケツに入れて運んでいます。バケツ84杯分ですかね」
三角棚では冬は保温をしており、設定温度に達したら自動で送風機が動くシステム。
「夕方になったら表面と底面をまぜてお米をならすのですが、この作業が終わったら少し温度を下げます。そうするとクエン酸が生成されるんですが、(回転ドラムで入れた)黒麹菌の特徴は、このクエン酸を出すところ。沖縄みたいに温暖なところでは無くてはならないもので、菌で汚染しないように守ってくれています。ちなみに、日本酒などの黄色の麹(黄麹菌)は酸を出さないので、こういう温暖でオープンな環境では作れません」
こちらは「もろみタンク」。
米麹に水と酵母を加えてアルコール発酵をさせています。
「私達は2種類の麹を使い分けをしています。1つは、比較的飲みやすくて少しライトな「若麹(わかこうじ)」という作り方。もう1つは、少し重ための昔ながらのクセのある泡盛(古酒)が作れる「老麹(ひねこうじ)」。こちらは麹作りの時間を長めに引っ張る作り方です。ウチは2種類を使い分けして味の幅を持たせています」
最後の工程は「蒸留」。
発酵後のもろみを蒸留して泡盛の原酒が仕上がります。
龍泉酒造では間接加熱式の常圧蒸留機を使用。
「蒸留機は、イメージでいうと、お湯が沸騰したやかんの口から湯気を冷却させて、液体に戻す原理と一緒なんです。蒸留機で加熱されたもろみは一部が気体になり、パイプを通って冷やされ、最終的にお酒となります。水を入れる前の原酒は50度前後ですが、法律でいうと泡盛は45度以下じゃないといけないので、45度ギリギリまで水を加えます」
出来上がった原酒は、貯蔵タンクで1年以上寝かせます。
「新酒用に合計6本の貯蔵タンクがあるのですが、熟成された古いものから商品にしていきます。ウチは泡盛らしいお酒のほうだと思います。コアなお客様がいらっしゃるのが特徴です」と話します。
黒澤さんに、美味しい泡盛を作る秘訣を聞いてみると、「コツコツ謙虚にやっていくことです(笑)。龍泉酒造は手作りを活かして、なかなか大手ができない事をやっていると思います。いつでも工場見学にいらしてください」と笑顔を見せました。
2.自分のお気に入りを見つけよう!看板商品に古酒、ハブ酒、果実酒まで豊富なラインナップ
今度は、工場の隣にある店舗をのぞいてみましたよ。
案内してくださるのは、工場長の黒澤さんと営業主任の國場 豊さん。
お2人が真っ先に紹介して下さったのは、3年古酒の「龍泉3年古酒 3,080円(アルコール度数:43度)」。
しっかりとした老麹手法で製造した香ばしい味が特徴で、じっくり泡盛を味わい人向けだそうです。
「まずは水を入れずにストレートで飲んでみてください」と國場さん。
こちらは一般酒の「龍泉ブルー 850円(アルコール度数:30度)」。
泡盛らしいお酒で、飲みやすくてすっきり味が特徴。
昔ながらの味で、1番本数が出ている商品だそう。
すっきり飲みやすいのは「龍泉ゴールド 1,400円(アルコール度数:25度)」。
若麹で仕込んだ新酒と老麹で仕込んだ古酒を絶妙にブレンドした泡盛で、古酒の香りが感じられる商品。
初心者にもオススメ商品とのこと。
取材をしていて気になっていたのは「原酒 1,800円(アルコール度数:50度)。
泡盛は通常、蒸留したあと水を加えて45度未満にするそうですが、こちらの商品は、水を入れずに商品化したお酒とのこと!
「これはですねぇ、泡盛をよく知っている人が買います。甘い風味が特徴で、地元のリピーター客や年配客がよく購入します。瓶で熟成させてもいいし、冷凍させて甘みととろみを味わってもいい。自ら古酒づくりをする方が好きです」と、國場さんは微笑みます。
こちらは、新しく発売されたばかりの「KAFU(カフー)」シリーズ。
梅酒、ハイビスカス酒、シークヮーサー酒の3種で、いずれも1,200円。
添加物、香料、保存料は一切入っておらず、素材の味が楽しめるシリーズ。
「梅酒」は紀州産の南京梅を使用し、濃厚なコクと酸味のバランスが良いのが特徴。
沖縄県産の黒糖を加え、梅の種類や配合量などにこだわったお酒。
「ハイビスカス酒」は、ハイビスカスの花びらにシークヮーサー、レモン、アセロラを入れ、隠し味に県産の黒糖を。
「シークヮーサー酒」は、シークヮーサーの果汁だけでなく皮と種も絞った果汁をあえてブレンドすることで少しビターに仕上げた一本。
男性ファンも多いそうで、「まずは氷だけ入れて飲んでみてください。ほんのり炭酸を入れても美味しいですよ」と黒澤さん。
3.県内で2社だけ!龍泉酒造目当てに来るお客様が狙う「ハブ酒」が登場
実は、龍泉酒造はハブ酒作りの老舗。
ハブ酒とは、泡盛漬けされたハブが入ったお酒ですが、沖縄では2社しか取り扱っていない大変貴重な泡盛だそうです。
見た目が強烈ですが、「クコやクミスクチンなどの薬草ががたくさん入っており、予想以上に飲みやすいと思います。滋養強壮にとても良く、アミノ酸がたっぷり入っていますよ」と話します。
飲食店などの店舗が購入する大きいハブ酒は90,000円と高価ですが、お土産にはお手軽価格の8,800円から販売されています。
外国人や観光客が購入することが多いそうで、ハブ酒を目当てに龍泉酒造に来店する方もいるそう。
龍泉酒造に来たらば、ぜひハブ酒をご覧あれ♪
龍泉酒造では他にも、世界自然遺産「国頭村」安田にある伊部岳から引かれた水を使用した泡盛「凌(シヌグ)1,800円(アルコール度数:30度)」も。
今回ありがたく試飲用として頂いた「シークヮーサーのお酒1,700円(アルコール度数:10度)」は、シークヮーサーの皮ごと絞った果汁を使用した泡盛ベースのリキュール。
しっかりとシークヮーサー本来の味が楽しめました!(香料、着色料不使用)
泡盛に比べてアルコール度数が低めなので、泡盛初心者の女性も飲みやすいお酒となっていますよ♪
店舗での購入は、平日8:30~17:30が可能。
工場見学は「できれば1週間前には予約してほしい」そうです。
最大20名まで見学可能だそうで、主に学生~70代の方が見学に来るとか。
「蔵元でしか売っていない限定ものもあります。試飲して、普段飲んでいるお酒と比べてゆっくり選んでみてください」と國場さん。
「ウチに来る人は、手作りの感覚のディープでコアなものが好きな人が多い。仕事帰りに泡盛買いに来る県内客もいますし、本当さまざまです。古風な昔ながらの泡盛が好きな方にこそ、ぜひ来てほしいです」と黒澤さんは〆てくれました。
龍泉酒造がある仲尾次エリアは、昔ながらの住宅街と商店が並ぶ通り。
沖縄の人たちの生活を垣間見ながら泡盛の工場を見学して、好きな泡盛を選んで、ゆっくり沖縄時間を満喫してみませんか?
スタンダードな泡盛からハブ酒、果汁酒まで、あなたの好きな一本をぜひ見つけてみてください♪
Photo&text:小鍋 悠
(取材:2023年12月)
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