まさひろ酒造

まさひろ酒造

那覇空港から車で15分。

沖縄本島南部、糸満市にある老舗蔵元「まさひろ酒造」。

泡盛の資料展示や製造工程の見学、試飲・購入ができる「まさひろギャラリー」があり、観光客が立ち寄りやすい酒蔵として人気を集めています。

琉球王国時代、泡盛製造は首里城周辺の“首里三箇”と呼ばれた崎山、赤田、鳥堀の村に限られていました。

王府の近くには、泡盛造りに欠かせない良質な水が豊富にあったからといわれています。

まさひろ酒造は「比嘉酒造」として1883(明治16)年に首里で創業。

昭和中期になり、三代目・昌廣(しょうこう)が泡盛に自身の名を読み替えた「まさひろ」を販売し、その味が人々に受け入れられて泡盛酒造所としての基盤が確立されていきました。

明治から令和まで愛され続け、創業140周年を迎えた、まさひろ酒造。

泡盛離れが進む若い世代に「うまい」と言われる泡盛を作りたい、と意気込む、現・代表取締役社長の比嘉 昌泰さんにお話をお伺いしました。

1.泡盛なのに後味スッキリ「島唄」への想い

幼い頃から工場の周りで遊んでいたという比嘉社長。

「創業家の一員として会社を受け継いで社長となり、泡盛の活性化を目指している」と語ります。

ところが、飲酒する人数は変わらないのにも関わらず、若い世代からは「泡盛は飲みにくい、後味が残る」などと言われ、泡盛が選ばれにくい現状があったそうです。

そこで、発案したのが140周年の記念酒ともいえる「島唄」。

試飲やアンケート調査を重ねて開発したのが「島唄」です。

島唄は、若い世代向けの泡盛として「スッキリ」「軽やか」という飲みやすさにこだわったそう。

フルーティーな香りと甘みのあるなめらかな口あたりで、爽やかな余韻が続きます。

そのため、島唄を飲んだ20〜40代の多くの人から「飲みやすい」「泡盛のイメージが変わった」と高評価を得られるようになりました。

沖縄の青い海と空をイメージしたデザインもフレッシュな印象です。

しかしながら、販路には多くの課題を抱えているとか。

若い人はスーパーやコンビニでは缶酒コーナーに直行する傾向があるそうですが、島唄は瓶入り、紙パック入りで販売しています。

「缶酎ハイもいいけど、まずは一度、島唄を飲んでみてほしい」と話す比嘉社長。

泡盛への情熱が伝わってきますね。

2.まさひろギャラリーの楽しみ方

まさひろギャラリー1階では、泡盛はもちろん、ジン、リキュール、ウイスキーと多彩なお酒を試飲しながら選べます。

写真は、沖縄初のクラフトジン「 まさひろオキナワジン」3,520円。

伝統のある「泡盛」を造り続けてきた職人が、新しい試みとして造ったものです。

県産の6種類の香味植物(シークヮーサーやグァバ、ピィパーズ、ジュニバーベリー、ゴーヤー、ローゼル)を使用。

ソーダなどで割ると飲みやすく、ジン初心者にもおすすめとのことです。

ホテルのバーなどでの取り扱いもあるそうなので、見かけたら試してみるのもいいですね。

写真は首里城をモチーフにした、沖縄限定の泡盛「首里城正殿」です。

黒は八年古酒、赤は五年古酒、金は十年古酒。

熟成された古酒は「クース」と呼ばれ、まろやかな味わいで、おみやげとしても人気です。

売上の一部は、首里城再建のために寄付されるというのも沖縄好きにはうれしいことですね。

店内に流れるまさひろ酒造のCMでは、社員らが一升瓶を頭に乗せて踊っています。

昔、漁師町・糸満では女性たちが収穫した魚を入れたたらいを頭に乗せて行商していたことにちなみ、週一回、朝礼でラジオ体操代わりに瓶踊りをしているとか。

糸満の地でも、文化と伝統を大切にしている社風が感じられますね。

まさひろギャラリー2階では、50年以上前に造られた泡盛を展示しています。

戦後のものがそのまま置いてあり、当時はビール瓶などをリサイクルして泡盛を販売していたそう。

今は見かけない酒蔵所のラベルなども見学でき、泡盛の歴史が楽しめます。

さらにギャラリー2階からはガラス越しに、泡盛を瓶に詰める作業風景を見ることができます。

瓶に詰めた泡盛は、早ければ2週間後には店頭に並ぶそう。

今回は特別に工場の中を見学させて頂きました。

工場の中には酒米を炊くにおいや泡盛独特の芳醇な香りが漂い、まさに泡盛ワールド。

夢のようなひとときを楽しませていただきました。

3.オリジナルラベルでオンリーワンの1本に

まさひろギャラリーでは、オリジナルラベル作りが体験できます。

お酒は十年古酒の泡盛、ジン、ウイスキーの3種類から選べます。

ラベルの文字は、好みの色やフォントを選ぶことができ、スタンプなどの種類も豊富です。

その場でラベルをプリントして瓶に貼れば、マイボトルのできあがり!

気軽に体験できるラベル作りは観光客に大好評なのだそう。

お客様へ楽しみを提供したいという思いが伝わってきます。

先代から受け継ぐ製法を守りながらも新しい取り組みにトライする、まさひろ酒造。

今後の展開がますます楽しみです。

Photo:藤井 千加

Text:平良 美由紀

(取材:2024年2月)

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